KKMX

イージー★ライダーのKKMXのレビュー・感想・評価

イージー★ライダー(1969年製作の映画)
4.0
A man went looking for America.
And couldn't find it anywhere...

 本作のキャッチコピーです。なんというネタバレコピーでしょうか!本作はとてつもなく虚しい映画でありました。詳しくないですが、本作は所謂アメリカンニューシネマってやつでしょうか?
本作は二重構造の挫折が描かれているように思います。

①自由を恐れ、憎む存在によって自由が阻害される。外的な挫折。
②そもそも、(本作で描かれる)自由は虚無で無意味である。内的な挫折。


 ①はかの有名なエンディングで証明されます。これは当時よりも現代のほうがしっくりくると思います。何せ自由の国アメリカはトランプが大統領になり、分断を煽っています。煽られる人々は、自由を恐れ憎む人たちです。
 南部や中西部といった『赤いアメリカ』の存在は、現在はかなりクローズアップされるようになりました。本作のエンディングは、唐突さはありながらも、分断の文脈からは非常に妥当性のあるものだと感じています。


 ②について。個人的にはこちらの方が興味深かった。主人公ビリーとキャプテン・アメリカはドラッグを売った金で自由気ままなバイクの旅に出ます。初めの頃は文字通り2人ともイージーライダーでしたが、徐々にキャプテン・アメリカの様子が変わってきます。ドラッグをキメてもハッピーにならず、少しずつ悶々とするようになります。そして、ビリーの「俺たち金持ちで、最高だな!」との言葉に「無駄だよ…」と返すキャプテン・アメリカ。この虚無・絶望感たるや…

 自由とかぬかしてますが、彼らは単に彷徨っているだけです。モラトリアムであり、終わりの来る自由。彼らは様々なしがらみから解放されているのでフリーダムですが、責任を負って自ら獲得した自由・リバティではないです。フリーダムは解放ゆえの高揚感はありますが、次のフェイズに進む準備がなければただの根無し草となり、虚空を漂い無意味さに侵されるのがオチです。
 その事実にキャプテン・アメリカは気づいた。それが描かれていることこそが、個人的には本作のキモだと感じました。①の挫折なんて21世紀の基礎教養みたいなものですが、②に関しては意外と人類が目を背けがちな挫折に感じます。


 本作には自分を生きるキャラクターが誰もいなかった。そのため、本作は虚無と無意味を描いた、反ホドロフスキー的ガーエーだと捉えています。
 好きか嫌いかと問われれば嫌いだが、観る価値のある、さすがの古典映画でした。


 ちなみに好きなBGMはラスト近くに掛かるボブ・ディラン。抜群に良い。オープニングのボーン・トゥ・ビー・ワイルドは、フリーダムの高揚感を描いていてちょっとはクるものの、この後に描かれるフリーダムが内在する虚無との落差に、フリーダム的リアルさを感じます(謎の文章)。
でも本作のテーマ曲はイーグルスのデスペラードですよ。本作よりも若い曲なので、もちろん映画に使用されていませんが。デスペラードはまるで彼らを歌ったように感じます。
 自由を盲信し、アメリカを見つけられなかった哀れなライダーたちにこの曲の一節を捧げて、この感想文を終えます。

Freedom, oh Freedom, well that's just some people talkin'
Your prison is walkin' through this world all alone

The Eagles "Desperado"


【追記】
 日本のイージーライダーは車寅次郎ですね。フリーダムに生きるが虚無。寅ちゃんのえらいところは、その虚無をちゃんと自覚していることです。だから、男はつらいよなのです。奮闘努力の甲斐もなく、今日も涙の陽が落ちる、陽が落ちるなのです。
KKMX

KKMX