めしいらず

マンハッタンのめしいらずのレビュー・感想・評価

マンハッタン(1979年製作の映画)
3.9
都会のスノッブな男女がくっついて離れて、またくっついて…。始まるその時には直情的なオスとメスなのに、それ以外は如何にも知的階級らしい取り澄ました風情で、その実、感情的にマウントを取り合ってばかりいる滑稽さ。そして別れ際の取り繕った卑怯な言い草。お為ごかしたり家族を持ち出したり悪役を引き受けるフリしつつ自己正当化の口吻には抜かりない。彼らは常に相手のことよりも己の身勝手な都合のことばかりだ。そのうちの一人である冴えない中年の主人公にいいように扱われ揺さぶられる17歳の恋人の純情。彼女の反応はいつでも素直で、身の回りの自称大人たちとは対照的だ。唐突な別れ話に狼狽える哀れ。その後、捨てられてみっともなくも戻って来た元カレを許容したようにも見える彼女も、しばらく距離を置けば二人の関係性を客観的に見られるようになる。女性が精神的にあっと言う間に成熟するのを知っているから、主人公は彼女を留学へ行かせまいと食い下がったのだろう。男はいつまでも経っても子供のままだ。
ウディ・アレンお得意のストーリーを特別にしたのはマリエル・ヘミングウェイの好演に尽きるだろう。そして猥雑な大都会ニューヨークへの尽きせぬ愛情を感じさせる美しいモノクロ映像もまた素晴らしい。如何にもアメリカらしい鷹揚なクラシック曲「ラプソディ・イン・ブルー」もやっぱり魅力的。ごく個人的な経験から主人公の心情が察せられるところ多々で古傷がしくしく痛んで仕方ない。
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