りっく

青色革命のりっくのレビュー・感想・評価

青色革命(1953年製作の映画)
2.9
脚本・市川崑、和田夏十コンビによる『足にさわった女』(1952/東宝)、『あの手この手』(同/大映京都)、『プーサン』(1953/東宝)に続く、市川演出による社会風刺喜劇映画。

狭い劇空間の中を個性豊かな複数の人物が駆け回るという方向性に、これまでの作品との共通項が見出だせるが、本作は石川達三の新聞小説を猪俣勝人が脚色した。猪俣は市川の初期の佳作『ラッキーさん』(1952/東宝)の脚本を書いており、ゆえに同作から発展した集団人間喜劇と解釈することもできる。

大学を追われた歴史学者の一家の人々、周りを彩る多種の登場人物、旧世代と新世代が入り混じり次々と騒動を起こして、やがてはハッピーエンドに相応する大団円を迎える。劇展開の疾走感は当時の市川映画の特徴のひとつであり、ドラマが進むにつれて作り手の狙いが明確になっていく流れも心地よい。

出演陣の弾けた演技も市川映画の楽しみのひとつにあげられるが、本作では女っぽい美青年を演じる三國連太郎が場をさらう。彼が深夜、バレリーナの真似をする場面がそのハイライトとなった。朴訥とした千田是也、宝塚の男役出身で颯爽とした久慈あさみ、戦後アプレゲール像を発する太刀川洋一、江原達治たちとの対比も絶妙だ。
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