momoka

ノッキン・オン・ヘブンズ・ドアのmomokaのレビュー・感想・評価

4.0
「天国では皆が話す海の事、夕日の事…」

たまたま同じ病室に入院することになった、余命わずかな脳腫瘍のマーチンと骨肉腫のルディ。
とあることがきっかけで、二人は距離を縮め、海を見たことがないと話すルディに、マーチンが天国ではみんなが海の話をするんだと、海を知らない者は相手にしてもらえないと語る。
そうした話をするうちに、二人は海を見に行こうと、病院の地下駐車場に偶然停められていた「ベンツ 230Slベイビーブルー」に乗って旅に出るのだが…。

この ”ベンツ” が実はギャングの大切な愛車であったことで、マーチンとルディはその手下から追われるようになったり、また無一文であった二人は、何とかお金を集めようと色々な作戦を決行し、警察からも追われる始末👮🏻‍♂️💦
それにも関わらず、二人が次第に仲良くなっていく様子にはホッコリするし、やりたい放題する姿も何だか楽しそうで死の気配は感じない。
また、マーチンとルディ、ギャングの手下同士の会話や、ギャングと警察官が何故かやり合うドタバタ感などは、どこかタランティーノ監督作品のような雰囲気もあり、面白かった。

しかしながら、脳腫瘍による激痛がマーチンを襲う間隔がだんだんと短くなっていったり、二人が最後にやりたいことを決めて叶えていく姿には、この二人に残された時間が少なく、待ち受けるのは死であることを深く胸に刻みつけられる。

心にグッとくるギャングの優しさや、切ないながらもどこか清々しさを感じさせるラストシーン。あんなにも穏やかで優しい余韻を残せる作品ってなかなかないのではないかと感じる。しばらくこの二人の姿を眺めていたい、そう思った。

主人公の余命が短い設定だと割とお涙頂戴系のストーリーになりがちだが、本作はそのようなことは無く、残された時間をいかに大切に過ごすか、まさに死よりも生を強く感じさせる物語だった。

笑える部分もありながらも、生きることについて考えさせられる、オススメな良作です。うまく90分にまとめられていて観やすい作品になっていると思うので、気になった方はぜひご鑑賞を🎞
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