竜平

ノッキン・オン・ヘブンズ・ドアの竜平のレビュー・感想・評価

3.7
余命僅かの重病を告げられてしまう二人の男がひょんなことから意気投合、やがて「海を見に行く」ために病棟から抜け出すことに、というところから始まる話。ドイツ映画。

突然の思いつきによる旅、そして逃避行。そこにマフィアやら強盗やら裏金やら、なんとも血生臭そうな要素がたくさん絡んでくるにも関わらず、変な残酷さというのは微塵もなく全体的に軽くて朗らかで、なんともコメディチック。とにかくテンポが良くて、展開は大胆だし、あれよあれよという間に事態は予期せぬ方向へ。題材として「死」というのが間近にあって、これも重たさみたいなのをほとんど感じさせず、むしろそんなの笑い飛ばすかのような内容になってたりする。どっしりとしたドラマを求める人にはまぁ向かないけども、今作で感じる、まさに「死ぬ気になればなんだってできる」といったニュアンスのポジティブさ、これが素敵だなぁなんて。所々で出てくる脇役たちのキャラの濃さは個人的にツボだったり。事件が起きてテンション上がってる刑事とか、チップもらってソッコーやめちゃうベルボーイとかね。そうそう、死にゆく主人公二人だけど、その道中でじつは関係ない人にプチハッピーをお裾分けしてたりして、まぁほとんど金だけども、人生に於いてこーゆーなんらかの「おこぼれ」で幸せ感じれる時ってあったりするよねーなんて。もしかしたら日々のプチハッピーは誰かの「命がけ」によるものかも、ってそれはさすがに妄想が行き過ぎてるな、うん。

ラストのこれぞ「哀愁」ってなカットが印象的。全然関係ないけど『ムーンライト』でもこんな感じの現象あったなと、そのラストシーンのためだけにこれまでの流れがあったかのような、なんとも力強いカットというやつ。まぁ何はともあれ本当にサラッと、そして空いた時間にサクッと楽しめるクライム系ロードムービー。俺にも金くれー。
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