むっしゅたいやき

冬の小鳥のむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

冬の小鳥(2009年製作の映画)
4.3
愛情の行方。
ウニー・ルコント。
自身韓国よりフランスへ養子に出された経歴を持ち、その経験を基に圧倒的なリアリティを作品へ齎している。

ストーリーは孤児となった少女の心の機微を追ったものであり、スペインの佳編『悲しみに、こんにちは』に共通するものがある。
が、カルラ・シモンの作品が孤独感からの脱却、或いは解放を著した事に対し、本作は懐古と逡巡、更に父への憧憬や愛情の行方に焦点を当てた点で大きくテーマが異なる。
言い換えれば『悲しみに…』での主体は妹夫婦であり、新たな家族でもあるが、本作の主体は飽くまで孤児となった“ジニ自身”であるとも言えよう。

この為、作品の態様もジニの心情を表す事に注力されており、父との暮らしは温かみの有るグレインフィルターを通し、且つ何れ記憶に埋もれる事を表現したかの様な暗闇でのスポットライト撮影を多用。
逆に孤児となってからはエッジと陰影の効いたショットに寒々しい曇天の空、冬木立と言った描写が目立つ。
また、孤児となってからは大人の目線の高さからのショットも多く見られ、表情を暗く、且つ読み取り辛くさせる事でジニの懊悩を描いている。

全体的に淡々とした構成で、山場にも分かり易い音響効果等が添えられている訳ではない。
説明台詞なども無いので、死体ごっこの意味も読み解く必要がある。
ラストも私好みではあるが、不納得な人も居よう。
この為観る者を選ぶ作品であるが、「孤児」と云う社会的に弱い立場の子供達を理解する為にも、観ておきたい作品である。
…この国でも、もっと特別養子縁組制度や赤ちゃんポストが認知されれば良いのに。
むっしゅたいやき

むっしゅたいやき