ろ

ショーシャンクの空にのろのレビュー・感想・評価

ショーシャンクの空に(1994年製作の映画)
5.0

「ハーモニカをやってたんだが、ここじゃ無用だ」
「そんなことない。むしろ必要だよ、忘れないために」
「なにを?」
「どこかにある灰色じゃない世界を。心の中にあるものをだ。それは誰にも奪えない自分だけのもの」

瓶ビールを美味そうに飲む同僚たちを嬉しそうに眺め、石を削りチェスの駒を作る。
刑務所の運動場を、まるで公園で散歩しているかのようにゆったり歩く。
いつもと変わらない日常を楽しもうとするアンディは、どこにいても、何をしていてもさせられていても自由だったし、その自由を奪うことなんて誰にも出来なかった。

モーツァルトは心の中で生きている。
その感覚を収容所の仲間たちと分かち合う場面が好きだ。
唐突にスピーカーから流れ始めるフィガロの結婚。
空に昇っていくような歌声に静まりかえる囚人たち。
ふと手を止めて大切ななにかに思いを馳せる、贅沢な時間。
悪いことはそう長く続かないことを思い出させてくれる、救いの音楽。

無実であることを認められなかったとしても、理不尽が降りかかったとしても、誰かに憤るより信念や希望を選ぶ。結局それは自分を大切にすることなんだよね。環境や他人を変えるのは難しいけれど、自分の考えや心の持ちようは変えられるからさ。

入所30年目のレッドに贈るハーモニカ。
入所10年目のアンディに贈る「七年目の浮気」のポスター。
心の中にある希望を贈り合った二人は、過去のない海に辿り着く。
真っ青な海とどこまでも続きそうな白い砂浜。
そよ風にモーツァルトが聴こえる。
ろ