めしいらず

ショーシャンクの空にのめしいらずのレビュー・感想・評価

ショーシャンクの空に(1994年製作の映画)
4.0
”一念岩をも通す”そのものの物語。希望を絶やさぬことの大切さを伝えてこれ以上ないハッピーエンドのあり方だと思う。とってつけた御都合主義的なそれとはものが違う。一つ一つの描写の積み上げがちゃんとそれぞれの人間像の厚みになっている。一人一人が物語の都合上の善悪で色分けされたりせず、欲得に塗れた所長も単なる悪役としてでなく実に人間的でふくよかに描かれている(彼の手先だけは別)。だから大団円にも説得力がある。途方もない計画。端から諦めてしまう者が多いほどの。その労苦は歴然である。そして長らくのぬるま湯生活を捨てるのは怖い。希望と誇りを忘れたフリすればそれなりに安楽なのだ。でも主人公はそちらに与せない。彼は冤罪だ。真実と自由のために途方もない労苦の道を選ぶのだ。願うだけでは何も動かない。確実に一歩ずつを刻むことだけが目的地へ続くと知っている。そして長い長い時間の経過。主人公は一心に費やした膨大な時間と引き換えに本当に自由を手にしてしまった。虐げた者たちにこれ以上ない鉄槌を下し溜飲が下がる思いのラスト。誰もがごく自然に快哉を叫んでしまう極上のクライマックスだ。毎日の穴掘り作業を描写しないのがいい。それを描けばサスペンスが主眼の脱獄映画になってしまっただろう。疑われることなく忽然と消え失せるからこそラストの爽快さに繋がったのだと思う。本作をオールタイムベストに挙げる映画ファンが多いと聞くけれど、それも大納得の名作。
再鑑賞。
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