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フィッシャー・キングのmaroのレビュー・感想・評価

フィッシャー・キング(1991年製作の映画)
3.5
「午前十時の映画祭12」で面白かった順位:21/27
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

「午前十時の映画祭12」にて。
1991年のアメリカ映画。
監督がテリー・ギリアムっていうこともあってか、クセの強い映画だった(笑)

とにもかくにも、この映画で注目したいのはロビン・ウィリアムズ演じるパリー。
一見、ただのホームレスしか見えないけれど、実は3年前の銃乱射事件において、目の前で妻を亡くした人物なのだ。
もともとは大学教授だったのだけど、事件がきっかけで精神崩壊。
今では人の言うことは聞かず、話す内容も支離滅裂な何とも絡みづらい人間になってしまったのだ。
とはいえ、性格は陽気で優しいんだけど。
心に大きな悲しみを抱きつつ、でも今では気丈に振る舞い、新しい恋に邁進するという、すごく複雑な役どころだけど、それを見事に演じ切るロビン・ウィリアムズの演技は凄まじい。

そんなパリーに救われたジャック(ジェフ・ブリッジス)。
いくら助けてもらったとはいえ、明らかに言動がおかしいパリーを見たら、普通は関わらないようにするよね。
自分だったらたっぷりお礼だけして、もう会わないと思うけど(笑)
ただ、そうもいかないのがこの映画の面白いところ。
パリーは銃乱射事件で奥さんを亡くしているけれど、その事件の引き金を引いたのは、間接的とはいえジャックである。
ラジオで彼が不用意な発言をしたせいで、事件が起こってしまったから。
だから、ジャックはパリーに対して責任を感じているし、何か手助けをしたいと思っている。
そこで、パリーが密かに想いを寄せるリディア(アマンダ・プラマー)との関係を陰ながらサポートするのだ。
相手の女性もなかなかクセが強いかったけど、それがまたパリーと相性バッチリだってんだから微笑ましいことこの上ない。

物語も終盤になる頃には、パリーとジャックはすっかりいい友人同士に。
パリーが暴漢に襲われたとき、ジャックはとんでもない行動で彼を励ますのだけど、そういった経験を通じて、ジャックもまた変わっていく。
自らの不用意な発言で、後に友人となるパリーの人生を変えてしまったジャックだけど、そのパリーのおかげで、ジャックは身近にある愛に気づけたから。

こうして最後まで観ると、総じていい話だなとは思うんだけど、気になる点はけっこうある。
まず、パリーのキャラクターはかなりクセがあるので、これは好き嫌い出るだろうなとは思った。
さらに、彼は亡くした妻のことを覚えてはいるんだけど、心の奥底に閉まっている様子なんだよね。
リディアに恋するのはいいんだけど、奥さんのことを乗り越えてのことなのか、過去の事件は見て見ぬフリをしているのかは、ちょっとわからない。
あと、そもそもだけど、いくらパリーに責任を感じているとはいえ、ジャックはそこまでして彼の恋路を手助けする義理があるのかなとは思うのよね(笑)

そんなわけで、だいぶ個性的な雰囲気の映画なので、正直好みは分かれるかなー。
陽気と見せかけて、実はとても悲しい過去を持つロビン・ウィリアムズの役どころが個人的には刺さった。
彼は2014年に63歳の若さで亡くなってしまったので、その寂しさを改めて痛感する。
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