原題は’’Only Angels Have Wings’’、天使たちの翼。愛すべきヒコーキ野郎たちへの敬意と憧憬が詰まった、宮崎駿『紅の豚』にも通じるアクション・ロマン。
ハワード・ホークスが製作、原作、脚色、監督を務めた入魂の一本。『赤ちゃん教育』と『ヒズ・ガール・フライデー』の間、43歳、キャリア13年目のエネルギーに満ち満ちていることが70年以上経った現在の観客にも伝わってくる。
工学部出身のホークスらしく、飛行機のメカニックを理解しているからこその空撮シーンは今でもスリリング。出来るかぎり実物にこだわっているが、ミニチュア模型、スクリーンプロセスも自然に観せてくれる。黄金期ハリウッドど真ん中の実力を思い知らされる。
主演のケーリー・グラントはまさにスターの貫禄。脇を固める『駅馬車』のトーマス・ミッチェルの笑わせ泣かせる自在な演技、『散り行く花』『東への道』のリチャード・バーセルメスとの三者三様のアンサンブルが映画を引っ張る。
そのアンサンブルに破調をもたらすジーン・アーサーは『赤ちゃん教育』のキャサリン・ヘップバーンに通じる、とてもホークス的なキャラクター。対するデビューしたばかり、後に伝説的女優となるリタ・ヘイワースはミスキャストな感が強いが、その美しさはやはり別格だ。