こたつむり

ザ・ミッション 非情の掟のこたつむりのレビュー・感想・評価

ザ・ミッション 非情の掟(1999年製作の映画)
3.5
★ 指令「組織のボスを守れ!」
  あなた…『覚悟して来てる人』ですよね?

中盤までは微妙な感触でした。
物語の筋立ては単純。「ボスを守るために集まった五人の絆を描く」というもの。セリフは極端に少ないし、淡々とした展開なので、物語至上主義者である僕には単調に感じたのです。

確かに映像表現としては格好良いのでしょう。落ち着いた色調。独特のカメラアングル。物語の渋さも加わって、男の美学を感じる…のかもしれませんが、好き嫌いがクッキリと分かれる筆致です。

また、音楽も単調…というよりも、チープ。
シンセサイザーの安っぽい音色。手癖だけで曲作りをしたように感じるメロディ。それは、映画音楽と言うよりも8ビットゲーム機のBGM。物語世界にマッチしているとは言い切れません。

だから、正直なところ。
「相性が悪いのかな…」なんて肩が下がり、途中で止めようとしたのですが…。

終盤の20分。
いきなり物語が動き出すのです。
表面は静かなのに、水面下では必死に泳ぐ水鳥のようにバタバタバタバタっと激しく、そして予断を許さない展開。なるほど、ここまでは前座だったのですね。

その後の流れは感服の限り。
積み重ねてきた感情が一点に集中し、ぶわっと溢れ出て、荒涼とした岩肌の裏にフナムシが蠢くかのような生々しさ。男たちの激情と哀愁が混ざった…ダンディズム。鳥肌が立つほどに格好良いのです。

そして、気付けば。
エンディングロール後に、もう一度最初から再生していました。すると、初見のときは味気なかった場面も面白く感じたのです。なるほど。何度も繰り返して観るうちに、じわっと浸透してくる作品なのですね。

まあ、そんなわけで。
男の美学を突き詰めた作品。
誤解されることも多いとは思いますが、黙って仕事を完遂するのが真の漢。だから、軽薄な言葉なんて不要だし、チャラチャラチャラチャラと軽薄な風潮に風穴を開けてくれる本作が頼もしく感じるのでしょう。

そう思えば、チープな音楽も必然ですね。
華美なストリングスなんて、本質を覆い隠すだけの戯言に過ぎないのです。
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