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宇宙飛行士の医者のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

宇宙飛行士の医者(2008年製作の映画)
4.9
["先生、これも運命ですよ"] 99点(OoC)

実は6年くらい前に鑑賞していたのだが、ゲルマン・ジュニアの作品をいくつか手に入れたこともあって、日本手簡単に手に入る唯一のゲルマン・ジュニア作品をもう一度見直そうと思って再鑑賞。コイツ結構悪どい手法使ってて、父親名義で作品出したりしてるのでFilmarks運営も混乱してるようなんだけど、本作品もクレジットはアレクセイ・ゲルマンで通している。多分分けられてるのは日本版DVDがあるからだろう。現に彼の作品である「Under Electric Clouds」は父親のとこに入っている(申請して解消)。

ロシア宇宙開発の最初の山場であるガガーリン打ち上げ前6週間を担当医師ダーニャから見つめる作品、と思いきやダーニャの話が中心である点が非常に興味深い。この医師の父親が優秀な医師であったという設定から、ダーニャはゲルマン・ジュニア本人であることが伺える。本作品はゲルマン・ジュニアの監督三作目であり、世界的に有名だった父親との決別を示しているんじゃないか。人類初の宇宙飛行という偉業の前に押しつぶされそうになるダーニャと、父親という巨大な存在に押しつぶされそうになるゲルマン・ジュニア。

何もないカザフステップとどこまでも広がる曇天によって、地表との境界すら危うくなるような"広すぎるが故の閉塞感"が心を蝕んでいく様子を映像的に語る素晴らしさたるや。ついには死んだ両親の幻想まで見るに至り、ダーニャは水浸しになった湿地を自転車で駆ける。家の周りをグルグル回るショットは神がかっていた。

もし、俺達が宇宙に行ったら、あの不親切な村も変わるかもしれない。と、言い聞かせて、自分の悩みを国レベルに昇華して逃げてきたんだけど。ガガーリンが宇宙に行っても、人は磁器が割れたことを気にしている。個人のちっぽけな悩みなんか、大したことじゃないと、誰も気にしないと、ゲルマン・ジュニアは気付いたのだ。

6年前に観た時はここまでの作品だとは気付かなかった(当時の評価は88点)。ゲルマン・ジュニアやりおるな。
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