ベビーパウダー山崎

心みだれてのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

心みだれて(1986年製作の映画)
4.0
一度目の出産はスタートしたばかりの結婚生活ふくめて喜びにあふれているが、二度目の出産の頃には夫の浮気もあり、すでに破局の兆しが見え始めていて、それでいて初産時の苦労と不安を夫と共に分かち合うくだりも入れ込んだりして、一本の波打つ線に同じ状況の点を二つ打ち、そこで人生の陽と陰を見せていく。素晴らしいですね。男と女が出会い、結婚して、離婚する、それだけの話しだが、そのシンプルさを、これだけ色濃く多彩に描けるマイク・ニコルズ、そしてシナリオのノーラ・エフロン(ほぼ自伝らしいが)の名人芸に感服&土下座。
マイク・ニコルズが地に足つけて撮すのは、日常ありきで語られるごく普通の男女の物語。街があり、生活があり、その他大勢がいて私たちがいる。青山真治みたいに名のある役者しか映っていない、のっぺらぼうで味のない映画とはまるで違う。気の合う友達(監督)の映画でしか見かけないニコルソンは、気難しそうだが出るとなったら間抜けな役柄でもなんでも全力さんだから大好き。なぜか役者としてイキイキしているミロス・フォアマンもちょっと嬉しい。
女性が夫婦、家族の役割から解放される物語でもあって、己の生き方を曲げてまでくだらない男(夫)と一緒にいる必要は絶対にない、エフロンの力強いメッセージにもガッツポーズ。ラストの顔面パイ、最高。