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ブロウのSSDDのレビュー・感想・評価

ブロウ(2001年製作の映画)
3.5
■概要
社長業をしているが貧乏な家庭に育った青年は田舎から都会に越す、ある日を境に自身の商才に気づき、密売を手がけ始める…。
1970年代に麻薬王となったジョージ・ユング。その当初からのステップと軌跡を描く。

■感想(ネタバレなし)
麻薬物を観たことがあればわかると思いますが基本的に繁栄と衰退を描く。

なぜなら初めのステップは他人にはできない手法や単純に度胸だけでのし上がるが、次第に能力以上に組織や資産が大きくなり破綻するから。

ご多忙にもれずユングもそういった一人なのだが、悪人然とした成金主義には見えないのが好感的に見えるように描かれている。

実際普通の人間でひどく暴力的だったり支配欲が強いようには描かれていないので、スカーフェイスのようなバリバリのマフィア物を期待する人には肩すかしかも知れない。

初めの方の若き頃の馬鹿らしいが成り立ってしまったビジネスの頃は面白く観れますが、あまりに好感的に描かれているのが逆によろしくないなぁと思う部分もあり評価しづらい作品でした。









■感想(ネタバレあり)
・パブリックエネミー
もちろん実在の麻薬王の半生を描けば、繁栄から衰退するのを観るわけだが、本作はユングの視点で描かれているため反面教師的に描きながらもどこか同情的で感傷的な作風である。
忘れてはいけない、この男はアメリカの敵で今の麻薬社会を築く礎を作った男なのだから同情なんてすべきではない。
まるで法律上規制があるだけで道徳的に問題ないかのような描かれ方は、感心しない。

・引退などできない
何度も逮捕歴がある人間を司法が見逃すわけもなく築き上げた富も、地位も家庭もなくすことになる。
そもそも他人の脳を壊しておきながら自分は奪われただの裏切られただのはお門が違うはず。
裏切られ疲れたから引退なんてうまいことにはならず、6年間何もしなくてもしっかり逮捕される。
そして金に困りまた同じことを繰り返すことも見抜かれていた。
一度引き上げた金銭感覚から下げるのは難しい。一生分稼いで逃げ切るのは難しいものだのだろう。

・無計画で無鉄砲なのに進むビジネス
初めはスチュワーデスの荷物検査はないからと個人で運べる量で稼ぎ、小売ではなく原産地を抑えに飛行機を盗んで現地に飛ぶというあまりにも単純な発想。
スーツケースの二重底化など古典的手法を堂々とやることで、現代ではおおよそ抜けられないことをやってのけた。
もちろん過去の手法たちを潰したからこそ厳しい税関があるのだが。

ひとつ学べることはおどおどしないための精神統一手法、楽しいことを細部まで思い描くことでリラックスし自己瞑想状態に入る。これはどんな鉄火場でも使える手法。

・総評
例えばマリファナは日本では非合法だが、ケミカルとは違い脳を破壊しないことから、一部国では解禁された。だから使用すること自体に反対はしないが日本国内では所持使用は認められないのだからするべきではない。

ユングが合法的ではないから荒稼ぎできたとしても、まだマリファナだけなら好感が持てた。しかしコカインなど人を破壊するモノに手を出した時点で非常に嫌悪する存在になった。

ハングリー精神でビジネスを成り立たせたり無茶苦茶な手法で広げるスピリットは見習うべきものがあるものの、やはり好きになれない。

自己責任ではなく、麻薬は周りも含めて全てを破壊するモノ。どんなに堕ちてもやるもんじゃない。売るなんてもってのほかだ。
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