KOUSAKA

冬物語のKOUSAKAのレビュー・感想・評価

冬物語(1992年製作の映画)
4.5
オープニングからラブラブな二人の男女(フェリシーとシャルル)が登場して、美しい海の風景や夕陽とともに映し出されて、全てが尊い冒頭4分30秒。

そして場面は唐突に「5年後」にワープ。あの美しい思い出はどこへやら。いきなり不倫の話かい!って突っ込んでしまいました😆突然すぎて、最初は話について行かれへんかった。

フェリシーが、美容師のおっさんマクサンスの品定めのために向かったヌヴェールという地域が、何とも味わい深い芳醇な美しさがあって、その土地の風景を見ているだけで心が満たされたような気分になりました。特にロアール川の橋を映すショット、好きです。

で、ロイックの家に戻ったら、友人夫婦が遊びに来ていて、奥さんの方はジギースターダスト期のボウイみたいなおばちゃん(終盤でエドヴィージュという名前であることが判明)やった😆4人で宗教観、死生観について議論するんやけど、ホンマにフランス人は論戦好きやなーと思いました。

でもこの時の議論や、シェイクスピアの「冬物語」を観劇するシーンなどが、ちゃんとラストの奇跡を補完する構成になっているところに、ロメール脚本の秀逸さが伺えます。

しかしまあ、マクサンスやロイックに対するフェリシーの言動がヤバくて最高です😆喜劇と格言劇シリーズの『満月の夜』のルイーズや『美しき結婚』のサビーヌの「取り付くシマのなさ」を思い出しました。

特に、完全Mキャラのロイックに対するフェリシーがすごくて、男性からすると「ちょっとまだ脈あるかも」と思わせてしまうような言葉が含まれるんやけど、実は完全に拒絶しているという絶妙な塩梅😆

たとえば「シャルルへの愛は永遠よ。マクサンスとは別。あなたも愛してる」と、どっちやねん!と思わせといて「あなたの愛に応える女(ひと)を探しなさい。私は、あなたをそこまで愛せない」って😣あー!なんで説教されなアカンね~ん!さらに「すごくつらいの。あなた以上によ」って!もうむちゃくちゃや〜!

さらに追い打ちをかけるように「私たち(フェリシーとシャルル)の愛と比べたら、あなた(ロイック)と私のなんか微々たるもの」って!いくら諦めさせようとしてるとは言え、言葉のパンチ力がイカつい😆

で、別れ話が終わって、最後にフェリシーが「ちゃんと寝るのよ」って。当然ロイックは「ムリだな」と返事。そりゃ、そうやで!寝られへんって!安眠出来るわけないやん!🤣

ロイックを捨てて、いよいよ娘も連れてマクサンスの元に引っ越したのに、彼に「妻です」って紹介された瞬間、迷いが生じてあっさりヌヴェールからパリに出戻り😵まあ、でもこの感じは何となく分からなくはない。

でも、だからと言って、あれほどシビアに別れを突きつけたばかりのロイックの勤める図書館に直行するのは如何なものか!「あなたも引き止めなかったわ」って、むちゃくちゃや〜。またドMのロイックが期待してしまうやん!🤣

でも、むしろダメ押しで「誰かと暮らすにしてもあなたじゃない」「理由(わけ)を?機嫌直して  愛してるから」「あなたの人生を壊したくない」って、もう十分壊しとるがな。アンタが傷口をさらに広げとるがな!😆

で、結論は「私たちは前世で会ってたのかも、あなたは私の弟だったかも、もしくは私があなたの犬か猫、もしくはその反対かな。親愛の情といったところね」と畳みかけていきます。まあ要するに、ロイックの人柄は好きやし、友人として親愛の情は抱いているけど、身を焦がすような恋の対象ではないということがずっと言いたかったんですね~🤔

パリに出戻りしたからには、同じ町に住むロイックと今後出くわす可能性もあるので、改めてちゃんと二人の関係性を定義付けて、後腐れないようにお互いが納得して「大切な友人」として関係を続けて行けるようにしたかったんだと思うと、ようやくフェリシーの言動を理解することが出来ました。

あとはもう奇跡のような展開と、奇跡のようなラストショットに身を委ねるだけ。これで全てオールOKと思わせてくれるロメールはやっぱり凄い・・😭特にあのラストショットは、恐らく偶発的にそうなったところをカメラがそのまま押さえ続けたからこそ生まれたのではないかと思っています。これぞ奇跡‼️必見です。

最後まで見終わると、冒頭の4分30秒を絶対に見返したくなります。自分も見直してしまいました😊
KOUSAKA

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