ほーりー

チャップリンの殺人狂時代のほーりーのレビュー・感想・評価

チャップリンの殺人狂時代(1947年製作の映画)
4.3
先日、母親と一緒にBSでやっていた『チャップリンの殺人狂時代』を観たら、思わず背筋がゾーとした。

コロナウィルスで世界が混沌としている現代と本作の舞台となった1930年代がとてもよく似ていると感じたからだ。

あとで聞いたらお袋も観ていて同じことを感じていたという。

日本でも第二次大戦後に帝銀事件のような凶悪犯罪が発生したけど、今回のコロナ禍が終息した後にもこのような犯罪がホント起きなければいいなと思う。

オーソン・ウェルズのアイデアからチャップリンが製作した痛烈ブラックコメディ『殺人狂時代』は、「一人殺せば殺人者だが、百万人殺せば英雄になる」というあまりにも有名な名言を生んだ作品である。

舞台はフランス。

世界恐慌により三十年も勤めた銀行をリストラされた元銀行員アンリ・ヴェルドゥ(演:チャールズ・チャップリン)は、車椅子生活の妻と幼い息子を養うために恐ろしいビジネスをはじめる。

彼は裕福な未亡人に言葉巧みに近づき、預金を引き出すように唆し、終いには殺害して金を奪うという犯行を繰り返す。

殺害後、ヴェルドゥは遺体をすべて処分して犯行を隠蔽したが、未亡人が行方不明になったとの通報が相次いだことから、事態を重く見た警察は動き出す。

ヴェルドゥはグロネイ(演:イサベル・エルソム)という裕福な夫人を今度のターゲットにするが、なかなか今までの被害者のように彼にはなびいてくれない。

しびれを切らしたヴェルドゥはすでに関係をもっていたアナベラ(演:マーサ・レイ)を殺害しようと画策する。彼は友人の薬屋から絶対に検出されない毒の調合を密かに聞き出していた。

一方、単独捜査の末にヴェルドゥが実行犯と睨んだモロー刑事(演:チャールズ・エヴァンズ)はヴェルドゥに近づくが……。


やりようによっては『冷たい熱帯魚』のように毒々しい作品になるところを、そこはチャップリン、やはり品格を保っている。

また印象的だったのは、アナベラ役のマーサ・レイのパワフルな演技である。

「アーーハッハッハッハ!!!!」

一度聞いたら絶対に忘れられない笑い声である。

それまで数々の未亡人を手に掛けたこの殺人鬼を唯一振り回した女性を演じたマーサ・レイを見ていると、どこか日本の笠置シズ子に似てるような気がした。

あまりこの映画以外、日本では馴染みのない女優だけど、アメリカ本国では軍への積極的な慰問活動を続けたことで大統領自由勲章までもらった偉人だそうな。

何度も彼女を殺そうとするチャップリンが彼女のパワフルさに圧倒されて、終いに彼女の姿を見ただけで狼狽する様に抱腹絶倒した。

さて、前述の「一人殺せば~」をはじめ本作は名言の宝庫である。数え上げればきりがないが個人的に好きな台詞は、

「あなたは丸くなったね」
「戦う理由を無くしたからさ」

である。

■映画 DATA==========================
監督:チャールズ・チャップリン
脚本:チャールズ・チャップリン
製作:チャールズ・チャップリン
音楽:チャールズ・チャップリン
撮影:ローランド・トザロー/クルト・クーラン
公開:1947年4月11日(米)/1952年9月2日(日)
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