社会のダストダス

モスラ対ゴジラの社会のダストダスのレビュー・感想・評価

モスラ対ゴジラ(1964年製作の映画)
3.0
大型台風に見舞われた静之浦の沖で巨大な卵が発見され、地元の漁師たちが手漕ぎボートで海岸に運ぶ(どうやって)。巨大な卵はインファント島から流れ着いたモスラの卵だった。

新聞記者である酒井と助手の純子は取材に訪れる。卵を調査に来た三浦博士と出会うが、ハッピー興行社の熊山という絵に描いたような嫌味な金持ちが地元民からモスラの卵を122万4560円で買い取る。熊山は後ろ盾の興行師虎畑とともにモスラの卵をレジャーランドの見世物にしようとする。

122万円だと…俺でもリボ払いでモスラを飼うことができる。しかも生まれてくるのは双子だから、一匹は手もとに残してもう一匹は高値でブラックマーケットに売っ払うことができるな。
当時の120万円って今の貨幣価値でどのくらいなんだろうか。

60年近く前の映画だけど今観ても真剣に見入ってしまう、迫力のある特撮で古臭さは感じなかった。今作のゴジラ先生は地面の中から現れる珍しい登場の仕方。昭和シリーズでは徐々にヒーローになっていくゴジラも本作はでは純粋な悪役。癇癪を起したように街で暴れまわり、しっぽの根性でテレビ塔を倒壊させ名古屋城でつまづく等かなり頭に血がのぼっている。

モスラの成虫は卵を守るためにゴジラと戦う。攻撃手段は乏しいが羽から発せられる風圧は、戦いの舞台となったレジャーランドを(自分の卵もろとも)吹き飛ばす破壊力。毒の鱗粉でゴジラを弱らせ、しっぽを掴んで引きずり回すなど健闘するが親モスラはすでに寿命が近かった。

「新聞は報道であって裁く権利はない」
宝田明さん演じる新聞記者たちが熱い正義感の持ち主。人間の欲の餌食になったモスラと小美人(ザ・ピーナッツ)のために奔走しする。去り行くモスラに対して言った「あの人たちへのお礼は、我々が良い社会を作ることだ」
…21世紀に入ってからこんな台詞聞いたことがない。モスラの卵を分割で買えると思った自分が恥ずかしくなる。

モスラはこれ以後の昭和シリーズでも常連になるが、2匹いたはずの幼虫は大人の事情で片方死んだらしい。