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ラブリーボーンのRenのレビュー・感想・評価

ラブリーボーン(2009年製作の映画)
3.5
兼ねてより気になっていたやつ!ティーンエイジの頃のシアーシャ・ローナンを拝みつつ、お話として一定水準の面白さ。"ラブリー" の響きに惑わされることなかれ。

14歳で殺されたスージーが、地上と天国の狭間からこの世を見守るファンタジー・ヒューマンドラマ。前提として今作、異世界ものとして面白い。明らかにこの世のものではない不可思議さ・美しさの具現化は、これぞ映画といった快楽がある。

それと同時並行で、復習に燃える父と妹とやつれていく母親、殺人犯の日常を描いていく。追跡や潜入といったごりごりのサスペンス要素で押し固められたシークエンスは、基本どれも緊迫感が高くて◎。

目に見えて分かる断罪も救済もやってこないため、そういうカタルシスは無い。死者が現世を見ている、なんてファンタジーを持ち出したらもっと色んなことができそうだけど徹底してそれをやらない。神の視点で事件を解決するミステリーに着地しない。

誰かのための解決よりも自分の浄化を選択するラストによって、今作は幕を閉じる。これじゃあ双方にとって浮かばれないじゃん、とも一瞬思うが、それでも生活は続くのだというエンディング。タイトル通り ラブリー(愛おしい)な物語であるとの見方も十分にできる。

死からの喪失と克服の物語は数多あれど、それが「死者」の視点を持って語られる物語はわりと稀かもしれない。作品全体を通しては「ファンタジー」と「現実パート」、それぞれの出力100%だったとは思わなかった(失意の家族の心理描写はもっと濃くていい)が、設定の斬新さを買ってこのくらいの評価!



《⚠️以下、ネタバレ有り⚠️》









その他、
○ スノードーム、ボトルシップ等、中/外が隔てられているもののモチーフ多数。現世に触れられないスージーのよう。
○ 遺体発見のチャンスを棒に振ってまで、好きな人とのキスを選んだスージー。彼女は完全にこの世と決別するために、やり残したことを成し遂げることを選んだ。
○ 娘の死という重たすぎる傷を負った家族の、これからの生活に想いを馳せてしまう。死を受け入れた先にきっとあるはずの光は、スージーが彷徨っている世界の視覚的な輝きともリンクする。
○ 破天荒お婆ちゃんのシークエンスはばっさりカットで良かった気がする....。
○ リンジーが殺人犯宅でノートを見るところの心理状況はあまりよく分からない。住人が帰ってきた瞬間にとにかく証拠品抱えて逃げたらいいのに。
○ 殺人犯の呆気なさすぎる退場。ボコボコにされたほうがスッキリしそうだけど、これはこれで作品自体の温度感と合っている。今までの被害者達の復讐・怨念による天罰的な最期だと思えばまぁ....。
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