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重力ピエロのtugmiのネタバレレビュー・内容・結末

重力ピエロ(2009年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

春が二階から落ちてきた

もう何年も前に原作を読んで、内容もぼんやりとしか覚えてないけれど、この冒頭は綺麗過ぎてよく覚えている(春が降ってきた、だと思っていたけど)

映画は2時間ありますが、とてもテンポが良くてあっという間に終わりました。

泉水と春は仲の良い兄弟。あんまり顔は似ていない。この二人を加瀬亮と岡田将生に配役したのが絶妙で素晴らしい。
蜂蜜作りは趣味なのか仕事なのか?の父、正志も小日向さんにぴったりでした。

ひょんなことから、街で騒ぎになっている連続放火事件を兄弟が追っていくうちに家族の過去が明らかになります。
決して思い返したい過去ではないですが、父と母の素敵な出会いや、実子ではない事を周りに揶揄されるシーンや、春が泉水に「レイプって何?」「レイプって…レイプって……レイプ、グレープ、ファンタグレープ!」と笑い飛ばしてしまうシーンは父の言う最強の家族だなと。

最終的には弟の連続放火・殺人(浄化)を黙認する兄。そして父。
世間的には「悪い事」だが、この家族にとっては「とても大事」なことをしたと。
父と春が嘘をつく癖が全く同じで「お前は私に似て嘘が下手だな」と言うシーンには思わず涙が出ました。血の繋がりではなく、これまで過ごした自分たちが家族という強いものを感じました。
反面、葛城と同じジンジャーエールを頼んだ春もまた血の繋がりを強く感じましたが…。

終盤のサーカスの回想シーンで「楽しそうに生きていれば地球の重力なんて感じないのよ」「私たち家族はいつか重力なんてなくなるかもな」とあります。原作を読んだ時は気が付きませんでしたが、タイトルの重力ピエロをきれいに回収していて泣きました笑 火葬場の煙のシーンも入れて欲しかったです。

ラストの2階から飛び降りるシーンは、自らの手で過去を精算した春にとって、もう重力なんて無いことがよく分かります。

ただし、「あなたがこの世界に望む変化に、あなた自身がなりなさい」とは、春は出頭せずにいる事を少なからず後ろめたく思っているのかな?それとも葛城を殺して自身が望む世界を達成できたと強く思っているのかな?

最後に。
「夏子さん?」
「春を追いかけているから、夏子さん」
という原作にありそうなやりとりも洒落ていて好きです。
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