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ミッドサマーのtugmiのネタバレレビュー・内容・結末

ミッドサマー(2019年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

話題の前作は未鑑賞で、カルト映画くらいの知識で観に行きました。

まず徹底した世界観が素晴らしい。
衣装、小道具、色彩、儀式…それだけでも見られて良かった点です。
特に村に到着後の門をくぐるシーンでは今までの世界との別離が表現されていて、もう後戻りできない感じがよく出てました。

さて、冒頭ではダニーの情緒不安定を煽るように家族が一家心中で亡くなります。
もともと情緒不安定のダニーはさらに情緒不安定に。
恋人のクリスチャンとの仲はギクシャクするばかり…失いたくないというダニーの執着がすごい。
一方のクリスチャンは黙ってペレの故郷の夏至祭に行こうとしたり、誕生日を忘れていたり、付き合った年数を間違えたり、サイモンとコニーカップルとの対比が酷い。

さらにアッテストゥパンで集団殺人を目の当たりにし、帰りたいと言うダニーに「文化の違いだから仕方ない」というクリスチャンに呆れながらもまだ離れられないダニー。

ペレは「クリスチャンを本当に信頼できる?」など煽ったり、「自分も両親を亡くしたから気持ちがわかる」と同調をみせるあたり、最初からダニーをホルガの家族の一員として迎えたかったのか(もしかしてダニーの一家心中もホルガの策略?を思わせるような)

ダニーがメイクイーンに選ばれ、クリスチャンがマヤと交わった悲しみを村の13人の女性と分かち合うことで、ダニーのクリスチャンへの執着がなくなります。
喜びも悲しみも分かち合える新しい家族を得たことにより、クリスチャンを失い1人になる恐怖がなくなったのですね。
ダニーによりラストの9人の生贄に選ばれます。

しかし、最後生きたまま焼かれる村人が悲鳴を上げるシーンでは、本当はみな焼かれる恐怖を知らない、ただ想像する苦しみであり、本当に火で焼かれて死ぬという苦痛は本人しか分からないあたり、滑稽に思えます。
ダニーにとっては何事も共有できる新しい家族ですが、それが偽りであることに気付くのでしょうか。

それにしても72で死ぬことが決まった人生、初潮が来たら見守られながら受精する人生、「命は循環し、名前は新しい命へ受け継がれる」しきたりや習わしの悪習を普通として受け入れてしまえる異常な環境は怖いですね。
ペレとイングマールはどんな気持ちで友人たちをこの祝祭に招いたのでしょうか。

ディレクターズカット版で鑑賞できたのですが、ずっと白昼夢みたいな感じなので、ちょっと長いなとは感じたが、伏線が随所に散りばめられているので、3時間の長さは感じませんでした。

失恋がテーマというのには納得しました笑
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