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キング・オブ・コメディの06のレビュー・感想・評価

キング・オブ・コメディ(1983年製作の映画)
4.0
妄想か、現実か。クレイジーか、成功者か。

私は「ナイトクローラー」を観た時に、サイコパスと成功者は紙一重だと知った。
よくビジネス書にも書かれている。「今の自分を変えるには、なりたい自分を想像してそちらに臨場感を移せ」とか。パプキンがやっていた、成功した自分になりきって喋るなんて、まさにその代表的な方法だ。この映画が撮られた時代にはクレイジーとされていたことが、今では成功者になる為のメソッドになっている気もする。口約束を信じて事務所に押しかけるのも、一見すれば迷惑行為だが確実なチャンスにも繋がっている。

それに、結局クレイジーなのは、誘拐までしてしまうパプキンか。それともソレを許容する観衆か?パプキンの行動は犯罪だが、成功すると言う意味では間違いだったのか?真っ当に生きる人間としては落第点だが、「一瞬の成功を掴み、一夜の王になる」といった観点では?

ラストの漫談で語られるパプキンの過去が素晴らしかった。
「辛かったことを笑い飛ばすために、僕はコメディアンになった」
あの一瞬のために、きっと彼の人生はあった。

この映画で語られる唯一無二の真実は、友達の女性が別荘に連れてこられて「こんな赤っ恥をかくなんて」と言ったこと。ストーカーの子がキスすら出来なかったこと。その哀れさは本物だ。
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