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カラーパープルの06のレビュー・感想・評価

カラーパープル(2023年製作の映画)
3.3
この時代にこの物語をミュージカルでやる理由が 全然わからなかった 。明るく 歌って踊っても、描かかれる 状況は悲惨でしかない。黒人女性・貧困・DV・差別。宗教色を強めて「波乱万丈な人生でもいつかは幸せが訪れる」みたいな描き方をしても、父親に二度孕まされて二度子供を取り上げられた女性の苦しみが減るわけではない。僕には、腹立たしいほど理解できない物語だった。

それに、セリーがずっと受け身なのも違和感があった。父や旦那に虐げられていて自尊心が亡くなっている女性は、自分から逃げる というアクションが取れないのかもしれない。それはわかる。しかし、金持ちで自立していて奔放な女とシスターフッドになれば救われるのか?神はそんな彼女をずっと見ていて、いつか恩恵がもらえるのか?そうではないだろう。

セリーの人生はたまたま上手くいき、たまたま生き延びたに過ぎない。なのに「自分に加害を加えていた相手を許すこと」を善と描くのはどうなのか。

後半、旦那がいいことをしたように描かれるが、あれだってセリーが何か為したのではない。セリーは逃げられるルートを人に用意して貰って初めて暴言を吐き、旦那は天罰があったから改心したのだ。そこに努力は介在しない。
それに、酷かった人間がこっそり善を成すことを感動的に描いているが、それは独り善がりで、人から選択肢を奪っている行為ではないか?作劇に全く共感できない。

この時代、この映画は誰のための物語だったんだろうか?誰がこれを見て救われるんだろうか?宗教に疎い僕だから、この映画の良さがわからないんだろうか?
あまりにも酷く、リメイク前を見たくなった。
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