Tラモーン

キング・オブ・コメディのTラモーンのレビュー・感想・評価

キング・オブ・コメディ(1983年製作の映画)
4.0
前々から気になっていたデニーロ狂気の名作と名高い作品!


コメディアン志望で34歳のルパート・パプキン(ロバート・デ・ニーロ)はアパートに母親と2人暮らし。人気コメディアンのジェリー・ラングフォード(ジェリー・ルイス)の大ファンの彼はTVショーの収録終わりに熱狂的ファンのマーシャ(サンドラ・バーンハード)に襲われていたジェリーを助け出す。ジェリーと2人きりで話す機会を得たルパートはコメディアンとしての自分の才能を売り込むが、彼を鬱陶しく思ったジェリーは「事務所に電話してこい」と追い払う。その言葉を本気にしたルパートのジェリーへの執着は狂気となり次第に彼を凶行へと駆り立てる…。


めちゃくちゃ怖かった…。やっぱり人間の狂気を演じさせたらデニーロの右に出る役者はいない、と感じさせるほどの圧倒的なイカれポンチ。手の施しようのないほど他の追随を許さない誇大妄想狂。

冒頭ジェリーの出待ちのシーンからして、熱狂する他のファンに対し"お前らとは違う"と言い放ち、ジェリーそっくりの服に身を包み、当然のようにジェリーをエスコートする。
バーで働く旧友リタ(ダイアン・アボット)との会話もどこか噛み合わない。特にスターのサイン帳を見せびらかすシーンの狂気は寒気すら覚えた。

"誰のサインだと思う?ルパート・パプキン!"

無表情に凍りつくリタの顔が怖すぎてもはや共感性羞恥を感じるレベル。

実はグルだったマーシャとの路頭での喧嘩も、"あと1時間半はオフィスにいるよ"と言い放ち公衆電話の前で連絡を待ち続ける執念も、ジェリーの事務所に通い続ける図々しさも、何もかもがルパートの頭の中で作り上げられた虚像への信頼から来ているのが怖すぎる。

自分はジェリーの後を継げるキング・オブ・コメディ🥸

ジェリーの秘書のキャシーに事務所から出て行くよう促されたときも"いや待つよ。お構いなく"と顔色ひとつ変えずに切り返す話の通じなさ。
ジェリーの別荘を特定し、友人ヅラして上がり込む底知れぬ恐怖感。

駅前で大声で1人で喋ってる人とかを見たときに感じる「あ、怖い」な要素をこれでもかと詰め込んだ狂気のデニーロアプローチ。

自分の正しさを信じて疑わない妄想男の凶行に震えるとともに、観客を爆笑の渦に巻き込んだ彼の不遇な人生もまた、弱者が暴力に頼らざるを得ない不公平な世の中への疑問が投げかけられているように感じた。

"ドン底で終わるより一夜の王になりたい"

全てを捨てた覚悟は本当に彼をキングに押し上げたのだろうか。ぼくにはまた妄想であったようにしか感じられなかった。


デニーロのイカれた演技も最高だけど、完全にイカれちゃってるサンドラ・バーンハードの演技も凄かった。ああいう風に喚いてるおばさんたまにいるもんね…。

たしかにホアキンの『ジョーカー』に通ずる作品なのは間違いないな。無敵の人ってなんであんなに怖いんだろう。

デニーロが家で1人喋り相手にふる出演者のパネルや、壁一面に引き延ばされた観客の写真の不気味さ。

自己肯定感を持てずに人格が捻じ曲がるとああなるのかな…。
本当さすがデニーロやで…。
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