回想シーンでご飯3杯いける

アンダーグラウンドの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

アンダーグラウンド(1995年製作の映画)
3.8
エミール・クストリッツァ監督作を観るのはこれで3本目。彼にとって2度目のパルムドール受賞作で、その地位を確固たるものにした作品という位置付けになると思う。

ナチス侵攻期の第二次世界大戦からユーゴ内戦まで、旧ユーゴスラビア激動の50年を、史実と創造をミックスする形で描く、とても独創的な作品だ。

冒頭から鳴り響くのはクストリッツァ作品ではお馴染み(?)のブラスバンド。これって、撮影時に実際に演奏しているのだろうか? 通常の映画だと後から編集で音楽を加えるのだが、本作ではBGM担当が劇中に出演して生演奏しているイメージ。しかも大半が戦時中で、必ずしもめでたい場面ではないから、不謹慎にも見えるのだが、この辺りのバランス感覚が何ともユニークだ。

50年という長い歴史を描くだけあって、170分の長尺で3部構成になっている。社会情勢、友情、恋愛、生命と言ったテーマを、コメディとして描きながら、しっかり心に染みる作品に仕上げるバランスは、どこか「ライフ・イズ・ビューティフル」に通じる。

同じクストリッツァ作品「ライフ・イズ・ミラクル」のレビューで、「∀ガンダム」に似ていると書いたのだが、いや、この「アンダーグラウンド」こそ、公開時期も含めて、「∀ガンダム」企画時の富野由悠季に強い影響を与えた作品である事は間違いないと思う。戦争の記憶、地上と地下を対照的に捉える設定や、女性の発想、動物の生命感を描く作風は、ほぼまんまである。