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独立愚連隊西へのtanayukiのレビュー・感想・評価

独立愚連隊西へ(1960年製作の映画)
4.0
ボロボロの軍旗をめぐって殺し合う空疎な戦争と、スパイや裏切り、復讐劇、逃亡兵など悲喜交交を描いた戦争映画。岡本喜八らしいピリリとスパイスの効いたエンタメ作品でもある。

戦場で潔く散ったはずの部隊の生き残り、帝国陸軍にとっては存在すら秘すべき男たちの寄せ集めである左文字独立小隊は僻地へと追いやられ、理不尽な命令も甘んじて受けるほかない。だが、サバイバーである彼らは決して情けない男でも恥ずべき男でもなく、むしろどんな状況でも諦めない逞しさの持ち主であり、杓子定規で応用の効かない硬直した組織とルールを笑い飛ばす剛気な男たちでもあった。

そもそも過酷な戦場の生き残り、歴戦の強者たちをヒーローと認めないこと自体、認知が歪んでるとしか言いようがない。人の命を守らずに、いったい何を守るというのか。たとえ戦争に負けて占領されても、生きていくのが人間なのに。死んだ人間の犠牲は尊いかもしれないが、生き残った人間の命もまた、あるいはそれ以上に尊いのだ。経験を次に生かせるし、そこで得た知恵も次代に伝えられるのだから。

なにより、息苦しい既存の枠組みからはみ出し、軽々とそれを乗り越えていく彼らの逞しさとおおらかさは、人を惹きつけてやまない魅力を放つ。それは命令に従うだけで思考停止した連中と比べたときに、よりいっそう際立つ。死んでバンザイする欺瞞より、生き残ってバンザイするほうがよっぽど人間らしいと思う。

この記事が参考になった。→【河毛俊作】『独立愚連隊西へ』は、タンスのなかの骸骨だ──みんなで語ろう!「わが日本映画」 | GQ Japan https://www.gqjapan.jp/culture/article/20210307-syunsau-kawake-movie

△2021/08/08 ネトフリ鑑賞。スコア4.0
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