Nasagi

オレンジと太陽のNasagiのレビュー・感想・評価

オレンジと太陽(2010年製作の映画)
3.8
イギリスで1970年まで行われていた政府ぐるみの「児童移民」を題材にしたドラマ。
「移民」とはいっても、親に無断で子どもたちを養護施設から連れ去り、オーストラリアなどの(旧)植民地に組織的に移送するという強制的なもので、しかも向こうで彼らに待っていたのは強制労働や虐待だったというのだから、実態は相当ひどいものだ。
これが「慈善事業」として行われていたという闇の深さよ…

元児童たちをサポートするソーシャルワーカーの視点から描かれているのだが、ケアする側の人間としてどこまで彼らの苦しみに寄り添えるのかという「距離感」がしっかり描き込まれているのが印象的だった。

映画自体は比較的すなおな作り方がされていたものの、「大団円で終わってなにか問題がきれいさっぱり解決したかのような錯覚をさせてしまう」というありがちなミスは回避されていた。
また他の方も指摘されている通り、オーストラリアとイギリスそれぞれの場面で対照的な画作りをしているのが良かった。
監督のジム・ローチはこれが長編デビュー作だという。まあ父親の存在が偉大すぎるのでどうしても比べられてしまうと思うが、少なくとも父ローチの作品をそこまで観ていない自分にはこれも良作に思われた。
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