ベビーパウダー山崎

黒の報告書のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

黒の報告書(1963年製作の映画)
3.5
死体を様々な角度から映し、殺人現場を上空から見下ろすショットでタイトル。抜群に格好良い。一本調子と言うか、遊びが出来ない宇津井健を、曲者の役者たちが手を替え品を替え、なぶり殺しにしていくのが最高。若さと言うより世間知らずの若者が「敗北」で終わるのは、なんとなく『セブン』のラストに重ねたくもなる(モーガン・フリーマンは殿山泰司)。続けて二度見てしまったが、結末を知ってからだと、前半の伏線、会話から何からその失敗までがフラグだらけでまた面白い。
一つのシーンで激しくカットを割っていくが、どれも構図がバキバキに決まっているから、平坦(テレビドラマのように)に映らない。役者の芝居は強く、日常的な会話さえ熱がある。「黒シリーズ」を通して見ても、映画として別格な増村。
一対一で物語が進むような安易な撮り方はしない、その奥にも必ず人が居て、だれもが動いているなかで物語が渦になっていく感覚。黒シリーズは基本的に「男」の映画だが、叶順子(女性)を添え物にしないで、一本の柱としてキチンと映画に立たせる(取り入れる)増村は、その辺りも偉大だなと思う。