てる

恋する惑星のてるのレビュー・感想・評価

恋する惑星(1994年製作の映画)
3.6
星3つ
ウォン・カーウァイとクリストファー・ドイルの出世作。昔からこのコンビはこんな感じの作品だったんだねぇ。
恋愛映画なんだけど、不思議な作品だ。警察官と飲食店の店員の恋の話が主だったストーリーなんだけど、とてもふわふわした作品だ。この二人の会話は意味があるようでないし、ないようであるし、なんだか掴み所がない。なのでいまいち話がよくわからない。フェイが警察官にどぎまぎしたり、ときめいていたりする姿を観て、そうかこれは恋愛映画なんだとようやく思い出す。
会話がとてもふわふわしているので、画ばっかりが気になる。クリストファー・ドイルが撮る画はとにかくお洒落だ。こうもゴミゴミした町がなぜお洒落に見えるのだろうか。色の使い方なのか、画の構図なのか、役者のおかげなのか。生活観があるのに感じない。美しいとすら感じるから不思議だ。会話そっちのけで、画に見とれてしまう。
この作品は雰囲気映画なのだ。内容を掴み取るというのは無粋で、綺麗な映画だったねというのが正しい感想なのだ。だから、いまいち好きになれない。私は明確な答えがあって、分かりやすい作品の方が好みなのだ。
でも、最後の下りは好きなのだ。カリフォルニアという居酒屋で落ち会う約束なのに、アメリカのカリフォルニアに行ってしまう。そして、二年後二人はまた例の飲食店で出会う。
フェイの行動はあまりにも理解不能で理不尽で身勝手だ。しかし、その奔放さが魅力的に見えるのが不思議だ。逃げ出すにしても本当にカリフォルニアに行ってしまうって逆の方向で行動力がありすぎる。その大袈裟すぎるジョークが妙にツボにはまって、お洒落に感じてしまう。久々に会った二人が何にもなかったように話し出すのも面白い。二年の時が経ち、立場が変わり、フェイの心境に変化が起きたのだろう。これから二人の関係が発展していくのだろうと思うとほっこりした。こういうはっきりさせない曖昧な終わらせ方はウォン・カーウァイならではだ。この終わらせ方が妙に甘美で、不思議と嫌いになれない。
好きじゃないけど、嫌いになれない。やっぱりこの作品は名作なんだろうなぁ。
てる

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