てる

ゲット・アウトのてるのレビュー・感想・評価

ゲット・アウト(2017年製作の映画)
3.5

ミステリーであり、ホラーであり、サスペンスであり、社会派でもある作品だった。

一番初めに抱いた感想は、こんなにもいまだに黒人に対する人種差別があるのかというものだった。
というのも、この作品は黒人を秘密裏に売買するという内容だったのだけど、それがリアリティーを感じたのだ。とはいえ、この作品のように、時間のかかる回りくどいやり方で商品を集めることはしないだろう。リアリティーはあるけども、真面目に考えてしまうと、無理がある設定ではある。
でも、見ごたえはあった。
このように秘密裏に売買され、行方不明になる人というのは実際にあり得そうではある。しかも、アメリカにおいて、黒人がその対象になり得るというのもなんとなくわかってしまう。

白人と黒人との結婚に違和感を抱く人もいるはずだ。実際に海外の映画を観ていていても、白人と黒人とのカップルというのはかなり稀だ。
アメリカには黒人も白人もアジア人も多くの肌の色の人種がいるはずなのに、その肌の色を越えた恋愛というのはあまり見掛けない。
なので、白人の彼女が黒人の彼を家族に紹介するにあたり、彼がかなり不安に思うのも頷ける。相手の両親から大いに嫌がられる可能性は充分にあるわけだ。
だが、実際は別の不安を持つべきだったのだが。

彼らの手口はかなり雑だ。警察の手が伸びれば、呆気なく逮捕されてしまうのは明白だ。だけど、そう思わせないのは、人種差別という壁があるのと、あまりにも時代錯誤の話しであるからだ。
人種差別は未だにあるものの、かつてのような激しい差別はない。だが、水面下で白人主義を訴えている者は存在するし、人身売買の需要と供給があるのは間違いない。それを警察という組織が黙認するというのもあながちあり得ないとは言い切れない。

最後はビターで後味の悪い終わり方をすることを期待していたが、まさかの勧善懲悪であった。
察するに、黒人である監督が白人に対する嫌味を込めた差別を批判するメッセージなのだと思う。
未だに黒人は差別を受けていて、白人の中には白人主義を訴えている者がいる。それを不満に感じているのだろう。その鬱憤を晴らすような終わり方だった。

なんだかその普段から感じている白人に対する不満というのが全面に出すぎていて、興醒めしてしまった。

未だにそのような非人道的な恐ろしいことが行われている、それを誰も気づいておらず、明日は我が身にふりかかるかもしれないという終わり方であれば、背筋が凍るようなエンディングであったのに。なんだか、勿体ない。監督の主張が強すぎた。もう少し冷静であれば、『ミッドサマー』になり得たのに。
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