ひでやん

恋する惑星のひでやんのレビュー・感想・評価

恋する惑星(1994年製作の映画)
4.5
金城武とブリジット・リンのパートは、狭い雑居ビルの中を縦横無尽に駆け巡るカメラワークが印象的だった。

極彩色の世界を流動的に映し出す手持ちカメラは、まるで空間を浮遊するように彷徨い、孤独な二人の距離を縮める。

刑事と麻薬密売人の一夜物語だが、熱い抱擁もキスもない。夜が明けると缶詰の賞味期限のように愛も期限切れとなる。

0.1ミリの距離や涙の蒸発、記憶の缶詰などの表現がポエムのようで魅力的だった。

金城武扮する刑事が、飲食店で新入り店員フェイとすれ違い、そこに別の刑事がやって来る。「恋のお掃除」なんてタイトルで話を区切らず、飲食店で主役がバトンタッチするのが秀逸。

「夢のカリフォルニア」が駆け抜ける空間を、天真爛漫のフェイ・ウォンが泳ぐ。リラックスモードでゆらゆら踊る。

刑事の部屋に忍び込む彼女の奇行は「夢中人」によって恋のお掃除へと変わる。タンポポの綿毛のような彼女は、俺の心に不法侵入してフワフワと舞う。

彼女は刑事の部屋に恋のサインを残す。その変化に話しかけるトニー・レオンが可笑しくてたまらない。

泣き虫の部屋、多感なタオル、太った石鹸など、擬人化された物がなんだか愛おしくなった。

鮮やかな色彩と斬新な映像による新感覚のラブストーリーで、何度も観たくなる余韻が残った。

余談

金髪女ブリジット・リンがオモチャ屋の前で煙草を吸う場面で、ぬいぐるみを買うフェイ・ウォンが映っている。別のストーリーの二人が一瞬だけ同じ場面で登場する演出が憎い。

その時買ったぬいぐるみにトニーさんは話しかけるのであった。
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