こたつむり

サウンド・オブ・ミュージックのこたつむりのレビュー・感想・評価

4.0
「自分に恋する娘だから殿方は惹かれるのよ」

正直なところ、あまり期待していませんでした。名作と誉れ高い『メリー・ポピンズ』でも、見事なまでに眠くなりましたからね。本作も「どうせ婦女子向きだよ」なんて侮りながら鑑賞したのです。しかも、序盤で流れるメロディは、舞台が修道院だからか抑制が効いていて、あまり心に響かず。「うんうん。やっぱりね」なんて不遜な姿勢でいたのですが…。

え。ウソ、やだ。
まさかの『ドレミの歌』を歌う場面で涙腺崩壊。あふあふあふあふ。何これ、最高。おじさんも一緒に歌っちゃうよ。ソードーラーファーミードーレー♪

そうなのです。
本作の真価は《トラップ一家》が出てきてから。子供たちが歌う姿にメロメロになる作品なのです。

だから『ドレミの歌』以外にも。
彼らが歌う場面では、どうしても目尻が下がる次第。特に『さようなら、ごきげんよう』を歌う場面では、破顔を超えて通報されてもおかしくないくらいにニタニタしていたことでしょう。

また、素晴らしいのは子供たちばかりではなく。お父さんが歌う『エーデルワイス』に揺るがない愛国心を感じ、男爵夫人の“大人の女性”としての対応に惚れ惚れとしちゃうのです。それに全般的な雰囲気は、まさしくハウス食品世界名作劇場。ホワイトシチューのような温かさに満ちていました。

だから、そのままで終われば幸せなのに。
「終盤の展開は蛇足じゃないのかなあ」なんて思ったのですが…なんと本作は実話を基にした物語だったのですね。いやぁ。驚きました。史実からは大きくアレンジしているようですが、全てが虚構ではないということに驚きです。

それを知ると、終盤の展開も納得ですね。
というか、主人公たちのことを考えたら、本作は《トラップ一家》の壮大なる序章。エンディングを迎えた後に第一章があるのですな(勿論、映像化はされていませんけど)。

まあ、そんなわけで。
本作の舞台は第二次世界大戦前。
苦難に満ちた時代ですが、それでも前を向く家族の姿は眩しい限り。確かに名作と呼ばれるのも納得の作品でした。
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