けんたろう

上海特急のけんたろうのネタバレレビュー・内容・結末

上海特急(1932年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

なかなか真っ直ぐには進めぬ特急のおはなし。


とにかく怒りんぼうの癇癪持ちやら、人を見下さないと気が済まない気取った婆さんやらと、乗客という乗客がみな個性豊かで面白い。だから物語もそういう彼らの列車内喧嘩ドラマなんかしらと思いきや、舞台は車内に収まらず、また革命軍やら人質やらと割合シリアスな要素が多くを占めて、意外も意外、たいへんドキドキする物語になっちまうんだから驚いた。そのうえ私欲に塗れた革命軍指導者や、意外といゝ奴な牧師さん、ミステリアスな中国娘などの予想外の発露によって、展開も全く読めずかなり面白い。

上海リリーも、愛する人のために自分を犠牲にするとは、そのダサすぎる名前とは裏腹に中々見上げた人間である。なるほどベタではあるけれども、やはり美しい物語だ。

上海流に、孔子に誓って愛のキスを交わわせる、なんともロマンチックな、そうしてウィットに富んだ結末もよい。

あゝ上海特急。なんていゝ物語。
たゞひとつもやもやするとすれば、物語のすべての不幸を一人で背負うた中国娘の結末くらいか。