ゆーさく

ゼイリブのゆーさくのレビュー・感想・評価

ゼイリブ(1988年製作の映画)
3.5
エライ思想の強い映画。

富裕層が自分の利益ばかり優先して底辺貧乏に割を喰わすこの格差社会を、エイリアンの地球侵略に例えて描く。



「OBEY(従え)」「SUBMIT(服従しろ)」「STAY ASLEEP(眠っていろ)」。

敵の正体を見破る特殊なサングラスを掛けた主人公が、町に溢れ返る雑誌やポスター広告を見てみると、こんな言葉が浮かび上がってくる。

実は世の中に溢れまくるこれらの宣伝物は、富裕層にまぎれ込んだエイリアン達が仕組んだサブリミナルだったのだ!っていう、、

もうなんか、頭のおかしい人が言いがちな陰謀論をそのまま映画化したった感満載の設定。いやおもろいけど。


金持ちってのは悪のエイリアン、もしくはエイリアンに魂売った奴のどっちかだ!っていう世の金持ちへの熱い風評被害が全編を覆い尽くす作品。


この敵のエイリアンってのがサブリミナルとか電波とかの回りくどい方法で侵略してくるせいで、あんまり悪そうに見えないってのが結構ミソ。

普通にスーパーで買い物してたり、美容院でパーマ掛けたりとかしてるだけの一見無害な奴らだけど、知らず知らずのうちに地球人たちの行動を制限し、意のままに動かし、従わせようとしてくる怖い連中。

これなかなか現実を上手いこと切り取ってるなと思った。現実にもこういった事象は結構あるよな。

「流行ってますよ」「みんな持ってますよ」「これが人気ですよ」とマスコミが嘘のブームを煽れば、人々は簡単に流されていつの間にか本当のブームになったりとかね。一種の洗脳っていうのか。


エイリアンのサブリミナルな侵略に気付いた主人公が、先手必勝と言わんばかりに普通に生活してるだけの丸腰エイリアンをショットガンで撃ち殺しまくるんやけど、これ今の感覚から見るとだいぶ卑怯臭いよなぁ。抵抗もできないエイリアンを撃ち殺して逃げるっていう。。。
だいぶ物議かもすと思うんやけど、公開当時の人はどう思ったんかね?

イデオロギーで戦いを仕掛けて来る外敵を相手に、銃で立ち向かうという構図はなんかテロリズム彷彿とさせるし。
エイリアンからしたら、主人公のやってることって無差別テロ以外の何物でもないしな。

少なくとも今の感覚から見たら、主人公の方が悪人に見えてくるなぁ、これは。

でもまあ、そういう点でも結構観てて興味深い映画ではあるなぁ。


「目覚めたくなんか無い。白線に沿って歩いていたい」
と洗脳の事実から目を背けようとする黒人の友人と、なんとかサングラスを掛けさせようとする主人公との取っ組み合いの喧嘩がやたら長くて笑った。

一旦終わったように見せといて、また喧嘩始まった時は、さすがに監督チョケたな、と思ったんやけど、どうやらこの長い喧嘩には意図があるっぽい。

なんでも、他人のイデオロギーを変えるっていうのは並大抵の事ではなく、それには強い痛みを要する、って事を喩えるための、あのやたらに長い喧嘩シーンらしい。へーぇ。。。

でもやっぱり笑てまうわ。
ゆーさく

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