このレビューはネタバレを含みます
ミルドレットとジェイジェイ
2009年10月29日 19時57分
1996年作品。「私の中のあなた」が静かなヒットを飛ばしている。脚本(他一名)監督ニックカサヴェテス。初監督作品。
米インディーズ映画の叙情派の始祖、ジョンカサヴェテス監督の息子さん。
ニックは、俳優もして、今は父同様監督にシフトチェンジ。
お父さんのジョンとは、一味違うテイスト。
本作は、彼の柔らかい「人柄」が滲むようなドラマ感覚をつむいでおります。
前半のフィルムカットが変わる瞬間 の俳優のしぐさや表情の素晴らしい変わり際は傑出した良さが表現されてると思います。JJのパンを食べるシーン等、、。
実際ニック監督の母である女優、お気に入りジーナローランズことミルドレットおばさん。
娘のモイラケリーと同居。ある日、いさかいからモイラは家を出ることに。
そこに、家の前の凶暴な夫婦。マリサトメイ扮する荒くれ気まぐれ夫婦と知り合います。
そんなおり彼女からJJという可愛い男の子を預かることになるジーナ。
ミルドレットとJJの優しい日々がはじまります。
ジーナローランズのすべてを包み込む優しさが本作の魅力です。
決して活発、平坦でない今までの道のり。娘モイラケリーとの関係。ジーナの奥深い優しさ。JJとのふれあうシーンに何度か目頭が熱くなります。
中でも歌のシーンや新聞配達のシーンは、自分の子供のころを想起してジーンときてしまいました。
ジーナのある意味大きな成長と決断の物語。彼女は年老いて、孤独を自覚しています。華麗に巣立った息子とうまくいかない娘、心の距離。
自分に正直に疲弊を感じ、どこかJJとのささやかなふれあいに全精力をむけるミルドレットの母性愛、心境の静かな変化。
そんな彼女を取り巻くハスッパなマリサトメイ、彼女の荒れた言葉と気のつっぱり。
息子たちとの食事シーンは笑えます。
娘モイラケリーの美貌と大人びた暴言。友達になるフランスの名優、ジェラールドパルデューのおっきなのんきさとつかのまの会話。
ラストのいさぎよさ。
ミルドレットのほんのひとときの子供とのふれあい。取り戻すかのような母性愛。可愛い子役ジェイクロイドとの時間。
ある女性の子供預かり物語ですが、なにか心にひっかかるドラマセンス、心にほんのり通う柔らかい気持ち、ドラマと役者の表情。
ありふれた感情を丁寧にこしたニック監督の手腕の良さ。
わかりやすいドラマ性やはっきりした落ちはありませんが、ニック監督のあたたかいまなざしがすでに傑出している小品なドラマです。
追伸
本作お気に召した方は、父ジョンカサヴェテス監督作品も是非!
父は激しくアダルトなフィルムドラマ作家でございます。推薦は「こわれゆく女」は凄いです!