記憶や思い出をめぐる映画。
人生におけるさりげなくもかけがえのない瞬間の数々が収められている。
時の流れ、それとともに変わるものの切なさと、変わらないものの安らぎ。
作中で主人公の脳裏に白昼夢のように蘇るのはいつだって同じシーン。しばらく離れていたのち母親のもとに胸躍らせて帰ってきたら、存外に素っ気ない態度をとられたり。
あの頃の悲しかった、切なかった、歯がゆかった、嬉しかった気持ち。同じような経験をしたわけじゃあないけど、同じような感情を抱いたことが思い出される。
すごくパーソナルなところに訴えかけてくる感覚がある。
クライマックス、絶望を潜り抜けた主人公が見せるはにかんだ笑顔がたまらなく良くて、自然と泣けてきちゃった。
にしても、主人公が語る、いつだって自分はマシだと考える、対象に対して距離を持って考えるというのは老若男女問わず、心理的な安全性を保つための普遍的なやり方だと思う。
