むっしゅたいやき

リスボン物語のむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

リスボン物語(1995年製作の映画)
3.8
ユルい…。何ともユルいけれど、何故か後味爽やかな作品です。
ヴィム・ヴェンダース監督作品。

友人の映画監督から絵葉書で助けを求められた録音技師が、ドイツからポルトガルのリスボンへ赴く、と云う内容。
とは言え移動は最初のみで、後は監督を探しつつ録音マイクを持ってリスボンをうろうろ彷徨います。
子供たちに様々な擬音を演じてみせたり、噴水に集まる鳩の只中で『鳩は嫌いだ』と言ってみたり、夜は夜で蚊と死闘を演じ、足が治れば全くキレの無いシャドウボクシングしてみたり。
カモられたり、ちょっとロマンスしてみたり。
そんなユルい日常を、三部作で見られたソリッドでシャープなヴェンダース特有の描写ではなく、温かみのある少し輪郭を暈したカメラで追っています。

終盤は漸く見付けた監督の、作為性に就いての疑問へ映画愛を以て回答し、笑顔のラストシーンへ繋がるのですが、ここに至って漸く我々はヴェンダースが誰を思い、この作品を撮ったのかを理解出来ます。
冒頭の『Ciao! Federico!』との見出しの新聞、そしてこの映画愛、ラストシーン
の無邪気さと至福感。
私には本作は、ヴェンダース流『8 1/2』の様にも思われます。

明るいリスボンの街と海の風景と、マドレデウスの切なく訴え掛ける様な歌声が印象的な作品でした。
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