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ブロークバック・マウンテンのcinemakinoriのレビュー・感想・評価

3.9


“俺はカマじゃない”
“俺も違う”


数年ぶりに再観賞。

公開が2005年、舞台が1960年代という点が非常に考えさせられる。
今でこそ普遍的で認知されている(あくまでも一般的には)マイノリティだが、1960年代となると話は違う。
その細かく切ない差別的表現が随所に散りばめられていて、胸が苦しくなる。
然し乍ら、ブロークバックマウンテンの美しく雄大な景色との対比によって、重たいテーマながらもとても純粋な気持ちで受け止めることが出来る作り込みは、2005年作品としてはかなり驚き。

ヒース・レジャーと言えば【ダークナイト】のジョーカーが真っ先に代表作として挙げられるが、この作品のヒース・レジャーも、彼の死が本当に惜しまれるほど素晴らしい演技。
共演のジェイク・ギレンホール、アン・ハサウェイ、ミシェル・ウィリアムスもまた、少ない台詞で難しい感情表現をそれぞれの立場で何とも言えない切なさと、体当たりな演技で魅せてくれている。
特に、個人的に胸が詰まるほどに切ない演技を魅せてくれたのは、ミシェル・ウィリアムス。
繊細な心情を豊かな奥行きで見事に演じきっている。

主人公イニスとジャックの切ない愛の物語は、先に挙げたように時代背景ならではの背徳感がある訳で、現代の目線で観てしまうと、単なる浮気亭主の胸糞映画に他ならない。
そんな社会的背景を含んだ訴求力が、国立フィルム登録簿に登録される所以ではないだろうか。


余談でありつつも、この作品を通して頻繁に使われる効果的サウンドに、アコースティックギターの音色があるのだが、これがまた美しい景色と2人の切ないストーリーにマッチしていてめちゃくちゃ良い。
ギルドかテイラー辺りのドレッドノートっぽい胴鳴りから、優しく爪弾かれるフィンガリングや抑揚の効いたピッキング奏法がいかにも飴色単板スプルースボディの60年代的な奥深いアコギサウンドで気持ち良いの何のって。堪らない♬


アンもミシェルも美しすぎるお乳様を露わにし、ジェイクもヒースもスッポンポンで大自然へダイブ!
なんのいやらしさも無い美男美女のフルヌードを観れるだけでも必見。←これこそ余談かw


ペンテコステ派やらメソジストやらの宗教的描写が、観る人によっては私のような無宗派とはまた違った視点で捉える映画なのかも知れない。
特にジャックの両親の住む家へイニスが訪れた際の会話は宗教的であり哲学的でかなり印象深い。
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