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2010年のmochiのレビュー・感想・評価

2010年(1984年製作の映画)
3.4
好きなところと嫌いなところが両方あったが、全然楽しめた。あまり評判が良くない作品ではあるが、酷評されるほど酷いとは全く思わない。風呂敷は広げるより畳む方が難しく、前作がある意味で広げた風呂敷を畳まないことで評価を得た作品なので、続編を作るというミッションが非常に大変なものだったことは想像に難くない。あれだけの哲学的な作品に続編を与え、解釈を提供する、という試みは敬意を表されるべきかと。
宇宙船内のカットの取り方や地球でのやり取りのカットはかなり良い。色彩感も好きだし、前作の格調高い雰囲気を継承できていると思う。他方で、星や宇宙空間の色彩や画面はチープな印象を拭えなかった。BGMを無くして、呼吸を聴かせる、という手法で緊張感を高めることには成功しているシーンでも、宇宙空間が映し出されると安っぽさが否めず非常に残念。
HAL暴走の原因については賛否両論あると思うが、個人的には好きでも嫌いでもない。納得できないわけではない。開発者との会話泣ける。地球でSALに「私は夢を見るでしょうか」という問いに「もちろん」と答えていた開発者が、HALに去り際に同じ質問をされたときに「わからない」としか言えないのが悲しい。結局彼自身も知的生命体ではなく、道具としてしかHALを見ざるを得なくなってしまったことを表現しており、所詮は人工知能に人間に従属するものとしての意味づけしかできないことへの無念がよく現れた名シーンだと思う。
全体的にはワクワクしてし面白かったが、以下の点は不満。一つ目としては、政治の話が絡みすぎなところ。背景としてあるくらいならいいが、全体にあらわれすぎ。二つ目としては、こちらの方が決定的なのだが、モノリスの存在を高尚なものから引きずり下ろしてしまっている。最後のボウマンのメッセージは、結局「平和が大事」というもの。なにそれ。モノリスはそんなことに関心がないくらい大きな存在だと思ってた。「平和」みたいな特定の主体(例えば人間)からしか与えられない視点をモノリスが持ってるわけない。モノリスが求めるのは究極の創造と調和だったのでは?ボウマンが元嫁に会いに行くのもは?って感じ。ボウマンはそんな小さな存在じゃないでしょ。人間では理解できない存在であってほしいのに、人間の幸せを願うのが、本当に理解できない。モノリスの爆発も同じ。モノリスは物理的現象を超える存在だと思っていたのに、めちゃデカく爆発して想像するとかダメでしょ。科学で捉えきれないパラダイムでしか理解され得ない存在のはずなのに。
普通に楽しんでみれたが、不満点があまりにも前作のテーマと関わっている部分なので、低く評価せざるを得ない。
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