Cisaraghi

ロバと王女のCisaraghiのレビュー・感想・評価

ロバと王女(1970年製作の映画)
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クリップはしていたが、アニメ映画だと勘違いしてたことに、フォローしている方のレビューが上がっていて気づいた。しかもシェルブールやロシュフォールのジャック·ドゥミ監督だったとは!観なければ!(U-NEXT無料期間中に)という訳で、観てみた。

おフランス映画なのに、市川雷蔵と若尾文子主演の大映オペレッタを彷彿とする、どことなく学芸会っぽくチープでデフォルメ度の高い美術や衣装。舞台美術や舞台衣装的な趣向だからかな。もちろん、大映オペレッタよりずっと予算はかけられていて豪華。仏語版Wikipediaによると、監督のジャック·ドゥミは、ハリウッド映画的なド派手な悪趣味さをあえて出したかったようだ。おフランス的な趣味の良さに若干食傷気味だったりするのだろうか。二人で野原を転げ回るあたりは、『マジカルミステリーツアー』(1967年)かって感じだった。時代的にシュールやサイケ要素が随所に入っている模様。

お話は、マジメにやる気ないよね、これ?みたいな話で、原作どーなってるのか気になる。フランスでは「ロバの皮」として非常に有名なおとぎ話らしいが、日本で知られていないのは、近親相姦を扱っているので絵本化されなかったからとか?

お父様と結婚しようかしら、となどと言い出すトンデモ王女だけど、ドヌーヴ様がおっしゃると何故か似合う。そもそもこの二人の間に親子の情愛が通っているとも思えない、というか、ドヌーヴ様の演技に情愛を感じたことが一度でもあっただろうか?いつも同じように冷たく、何を感じ何を考えているのかよくわからない(何本も見てないけど)。とはいえ、これは立派な性的虐待の話なのでトボけたことを言ってる場合ではないのだが、途中から父親の存在は打ちやられ、強烈な臭いを放つロバの皮を被った、不可触賤民のようなシンデレラの話に変わってしまう。複数インパクトがあって盛り沢山のおとぎ話だ。

ミッシェル·ルグランはさすがに大映オペレッタとは世界が違った。しかし、ケーキのレシピで1曲とは…。ミッシェル·ルグランにしては変哲のない、本当にTVのお料理番組とか通販番組に使えそうな明るく健全な曲。しかもレシピめっちゃ雑(笑)。こんなCMソングのような曲をあえて書くなんて、やっぱフザけた映画なのかな。

王子役はロシュフォールで水兵マクサンスを演じていたジャック·ペランらしく、あのすれ違ったままだった二人は、ここでやっと出会って恋を成就させたということになる。めでたしめでたし。
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