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赤い影のBaadのネタバレレビュー・内容・結末

赤い影(1973年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

学生時代に池袋の文芸座で『地球に落ちて来た男』を見て以来、ニコラス・ローグの映画はどれを見ても面白くてたまらないのだけれど、久しぶりにDVDでこの映画を見てみて、その理由が判ったような気がする。

なんというか、この人は映像に耽溺しているというか、映像で出来ることを優先して描くことに気持ちがいいほど徹底しているのだ。

この映画自体は、カットバックを多用した凝った作りの割には、日常生活の中に潜むありふれた恐怖と、非日常的な猟奇的な連続殺人事件を組み合わせただけの、わりと平板でもやもやした作りなのだが、見終わってからそれぞれの登場人物の持っている認知能力がいかなる物であったのかを思い起こせば、きれいになぞは解けてしまう。

気持ちがいいほど分かり易いうえに、神秘的でさえない、あからさまに論理的な脚本なのだ。

それに加えてこの監督の映像は、生活感や肉体的な動きの確かさがきちんと伴っている。だから切れ切れのカットバックを見せ続けられても、ついつい見入ってしまう。

見終わってしまうと、な~んだと言うような単純な顛末なのだが、見終わる前に動員した集中力がきちんと報われる感じがとても気持ちがいい。

ハチャメチャで内容すらもはや覚えていない『パフォーマンス~青春の罠』、驚くほど完成度の高い『WALK ABOUT~美しき冒険旅行』のあとで、作為が剥き出しのこのような映画が撮られたということは、少し不思議でさえあるのだが、その前にロジャー・コーマンのもとで『赤死病の仮面』(これのみ未見)に携わっていたとDVDの映像特典を見て知り、そのすべてをもう一度見直してみたくなってしまった。

(明晰な映像の論理 2010/12/20記)
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