ゆん

フロンティアのゆんのレビュー・感想・評価

フロンティア(2007年製作の映画)
3.3
暴動が多発しディストピアと化したフランスで、騒ぎに乗じて金を奪いオランダへと逃亡した移民グループ。その片田舎の宿屋を営むのはキ○ガイ食人一家だった。

よくある殺人鬼もののフォーマットに則っているようで、要所要所の設定は凝っていて微妙に噛み合っていないのが面白い。
映画は政治的混乱から始まり、移民グループ達によるアメリカ的政策への批判が意味ありげに挟まれるのだが、結果的に彼らを殺害しにかかるのはナチスの残党一家という。現政府に対する皮肉をスプラッタに乗せて云々という話ではなかったのね。
宿屋の看板娘が客を色仕掛けで落としていくが、そのお姉さんがやたらテキサス風な上に、一家との夕食シーンはモロ悪魔のいけにえ状態で...正直悪魔のいけにえオマージュはデビルズリジェクトで行くところまで行った感があり手垢もまみれてるので少々ウンザリする。
特に本作は後半血みどろの追い上げも素晴らしく全体に品もある大作なので、安易なパロディに走るべきではない。これは日本の作品にも言えることだけど、せっかくのフランスのスプラッタホラー作品なのだからオリジナリティを強調してほしかった。

素晴らしかったのは、それぞれが憎み、嫌悪しあう食人一家の描写。
家族を強く結びつけるのは絆などという生易しいものではなく、恐怖や暴力による洗脳と思い込みである。
逡巡しながらも「そういうものだから」と殺人に加担していく家族がドライに描かれ、映画全体のちぐはぐさも、この奇妙な家族と不思議にマッチして底知れぬ不気味さを演出していた。
ただ地下の食糧保管室に吊るされた人間達はさすがに多すぎというか、食べきれるのか?と不安になったが。
ゆん

ゆん