ゆん

万引き家族のゆんのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
3.0
「誰もしらない」を観たのはもうずいぶん前のことだけど、未だに鮮烈に記憶に残る作品だ。
何よりも、色んな意味で期待を裏切る内容だったからだ。親からの悲惨な虐待、世間の大人たちの見て見ぬふりに囲まれながら、背徳的なまでに美しい子供たち!特に終始上半身裸の柳楽優弥は奇跡的な美少年ぶりを誇り、日本中のショタコン達は狂喜と同時にそのどうしようもなく絶望的な物語に極鬱のどん底に突き落とされた。
そう、現代社会でおそらく最も悪質で卑劣、そして最も表沙汰になりにくいという厄介な重大犯罪「児童虐待」をテーマに社会派の皮を被り、その実か弱く可愛い子供たちへの庇護欲をそそるだけそそらせて淫靡な世界へと誘う変態小児愛映画だったのだ!これを観た誰もが、世間に対する義憤を大いに感じながら心の奥底にどす黒いものを感じたに違いなかった。

さて今回の「万引き家族」にも出てきました、親にろくな教育も受けず、ボロを纏い万引きに明け暮れる美少年。
父親役のリリー・フランキーに万引きの極意を教わって生きるも、成長の中で善悪の区別がついてくる。ある日いつものように近所の駄菓子屋で万引きしようと思ったら、駄菓子屋の店主(柄本明)に見咎められ「妹には万引きやらすなよ」みたいなことをうすら寒い事を言われまもなく店は潰れる。
そんなエピソードをはさみつつ、少年は父親と違い賢く、優しい人間へと成長していく。これは貧困は連鎖することなく、成長次第で負のサイクルを打開できるという綺麗事、言い方を変えれば救いの象徴だ。
本作公開時に日本に貧困があるとか無いとかで議論が起こったが、こんな最後に希望を持ってくるような虚像の貧困なら存在しないと言ってしまっても構わないと思う。
「誰もしらない」の衝撃再びかと思って観るとパワーダウン感が否めない。これが日本の貧困だ!と胸を張って世界を、カンヌ映画祭をドン引きと絶望と美少年愛の渦に巻き込んで欲しかったよ。
ゆん

ゆん