クシーくん

血ぬられた墓標のクシーくんのネタバレレビュー・内容・結末

血ぬられた墓標(1960年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

本作の後にイタリアンホラー黄金時代を担ったマリオ・バーヴァのヒット作。
登場人物全員イタリア語を話しているのだが、17世紀はモルダヴィア、魔術を使った咎で美しき王女アーサは恋人ヤヴティッチ公と共に、呪いの仮面を被せられた上に火炙り刑となる筈が、大雨が降り火炙りは中止。処刑された亡骸は罪人の墓所へ葬られた。
2世紀後(!)、学会へ赴く途上、老医師と助手は、通りかかった森の礼拝堂の中に、偶然王女の亡骸を見つける。墓所のガラスで手を切り、出血してしまった老医師と助手は礼拝堂を跡にする。老医師の血は、今は亡き王女の顔に滴り落ちていた…

古城のロケやセットも美しい、古式ゆかしきゴシックホラー。ではあるが、目からウジャウジャ湧き出るウジ虫や、暖炉に放り込まれて燃え盛る人間の頭を淡々と映し出すなど、古典的で刺激の少ないかつてのホラー映画からの大きな脱却がそこには見られる。特に、内側に鋭利な針が沢山ついた青銅のマスクを無理矢理つけられた為に、顔中が穴だらけになっている王女の顔が大写しになり、よく見ると穴の傷跡で周りが膨らんでいるのが生々しすぎて、そのリアリティの追求に恐ろしくなった。アンデットを退治する方法が目を刃物で潰すというのもエグ過ぎる。

恐るべき呪いの力で蘇ったヤヴティッチ公、魔女であり恋人であるアーサ王女を復活させる為に作中色々と暗躍するのだが、恨みを持つ一族やその使用人を後ろからそっと近寄って絞殺する、恨みを持つ一族を暖炉にぶん投げるなど圧倒的暴力で次々と始末していく。超自然的な力で蘇った割にはフィジカル一辺倒、最後もステゴロで普通に倒されていた。肝心のアーサ王女もアンドレイに正体を見破られた為に敗北を喫する事になるが、村人達は200年の時を経て蘇った魔女に対して特にビビる事もなく、縄でふん縛って手早く火炙りにかけられていてちょっと笑った。普通もうちょっと警戒しないか?

撮影監督の下積み時代を経た、マリオ・バーヴァの特撮はいずれも目を引く素晴らしい出来栄え。特に生気をアーサ王女に吸われたヒロインが段々と老けていく過程をワンショット内で収めているのが物凄い。種を明かせば色ペンで皺を描いて、照明を色付きから無色に変える事で色付き照明では見えなかった皺が浮かび上がる、といったトリックらしいが、CGのない時代ならではの味わいここにありと言った感じ。

あとどうでも良いけどこれゴーゴリのヴィイが原作だったのか。「妖婆 死棺の呪い」と全然話違くね?
クシーくん

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