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レオニーのメルのレビュー・感想・評価

レオニー(2010年製作の映画)
3.8
札幌のモエレ沼公園や岐阜提灯を模したスタンドライト「AKARI」シリーズのデザイナー、イサム・ノグチ。
彼の作品をTVで見る度に以前に観たこの映画を思い出す。

これはイサム・ノグチの母レオニー・ギルモアの半生を描いたもので、米国在住のノンフィクション作家ドウス昌代さんの「イサム・ノグチ 宿命の越境者」(講談社ノンフィクション賞)が原作。

学生時代から芯の強さが災いして変人扱いされていたレオニーは、日本人の詩人野口米次郎の編集者をするうちに恋人となり身籠る。
しかし、米次郎は日露戦争を口実に逃げる様に日本へ帰国してしまう。

母親の反対を押し切って彼女は3歳になったイサムを連れて日本へ行くが、米次郎には既に日本人の妻が居て…。

レオニーは幼いイサムに言う
あなたの芸術は「武器」
あなたの芸術は「声」
芸術家には限界は無く国も国境も存在しない 芸術を介せば言語の壁も超え、実りある人生を送れると。

彼が世界的な芸術家となり、芸術によって世界を渡り歩き、友人に恵まれても何故かそこに孤独を感じてしまうのは幼少期の体験が大きく影響しているのかも知れない。

レオニーの学生時代の友人、津田梅子が「この日本社会ではあなたの生き方は女子生徒たちには説明できない」と仕事の援助を断ったのは時代的に考えたら仕方ない事でしょう。

大工の大地康夫、女中の吉行和子、山野海の演技が抜群に良かった。
小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の奥さんとも交流があったのね。

エミリー・モーティマーは「ラースと、その彼女」の優しい兄嫁とは打って変わって強く逞しい母親を演じ、30代後半なのにリアルな老け役が見事でした。

息子は父親が望んだ勇ましさと、母が望んだ芸術をしっかりと受け継いだのだ。
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