ぼぶ

サイダーハウス・ルールのぼぶのレビュー・感想・評価

サイダーハウス・ルール(1999年製作の映画)
4.9
(ほんの少しだけネタバレかも)


いやー、冒頭の電車が駅から出て行くシーン。
この時点でカメラワークに雰囲気があって、雪の山道を登って行くとあるのが、駆け込み寺的な、医療施設を兼ね備えた孤児院…というのも引きの画角で伝わる。

そして本当にカッコつけとかでなく、もうこの時点で、「やばいなー最初語りだなー、これもしかすると最後またここに帰ってくるやつかなぁ…だとすると、おそらく俺めっちゃ好きなパターンの作品だなぁ…」となっておりました。(やがてそれはほぼ当たる事に。笑

全体的に、生死・出産堕胎・戦争・人種・性の問題など、扱われているテーマは激重なのだけれど、雄大さとミニマムさのバランスの良い自然の描写や、無邪気な子供たちの笑顔、ところどころに仕掛けられた笑いの種、などが効いてるせいか、ダウナーになることはなかった。

そしてトビーマグワイアは正に適役というか…一見ひ弱そうに見えるけど、実は芯があり能力もある、だけどスレてなくて真面目だから葛藤を抱える…みたいな青年像にピッタリの演技で素晴らしかった。(マイケルケインが、ヒューマンモノですごい演技なのは勿論なのだが。

にくい名シーンも多くて、孤児院の大部屋の寝室の感じとリンゴ農家の大部屋の寝室の感じが似ていたり、「自分の仕事は何だ」からの医者だ!だったり、車と少尉が映るガラスごしにトビーが映されていたり、海デートのガラス片、映画にまつわるアレコレ、少尉が結構いい奴なシーン、狂おしいほどに美しいシャーリーズセロン…と、枚挙にいとまがない。

でも時が流れて行くと色んなバランスが変わり、そうして最後の方ではじんわり、じんわり、じんわりと、なんとなくわかってたけど、どう落ち着くんだ…と思わされながら、終盤の穏やかな音楽と共に包まれていく感じもあり、色んな意味の涙が出てくる。
なんだよ、心臓!!!

でもどうやって終わるのかなと思っていたら、ほんの小説の一節なのに、まるでこの数時間の色んなシーンが駆け巡るような読み聞かせと、あの言葉でおやすみ。
みんな笑ってたなぁ、すごく幸せな気持ちになった。
久しぶりに大好きな作品に巡り会えた、そんな一作。




個人的には、トビーに片想いしてる孤児院の子がすごく好きで、一挙手一投足が可愛らしくてタイプでした。トビー帰ってきて何より。笑


追記.
少し調べたら、原作者が駅員さん役でカメオ出演しているんだって!
そういう遊び心のある作品は、ますます好き。
ぼぶ

ぼぶ