スランプに陥った映画監督が、本妻と愛人(たち)との関係に悩んだ末に、妄想の世界に入り込んでいく、という話。
ぼくはゴダールなんかよりも、喜劇的で祝祭的なフェリーニのほうが好みなのだけれど、基本的にイメージの作家なので、あまり緊密なストーリー性は期待できない。退屈な部分と、目眩くイメージの奔流の部分との落差が激しい。
マストロヤンニ演じる映画監督は、SF映画を撮っているという設定で、巨大な宇宙船セットの場面はワクワク感がある。
全体にやや散漫な印象があり「アマルコルド」や「女の都」のほうが個人的には好きだが、フェリーニが映画について、その創作の苦しみと、高揚感を描いているという意味では、唯一無二の作品かもしれない。
主人公は自殺したのかな、しなかったのかな。例によって、祝祭的なエンディングで幕を閉じる。
奥さん役のアヌーク・エーメが美しい。また映画の冒頭に幻想のように現れ、終盤にふたたび登場するクラウディア・カルディナーレが、創作のミューズ的な役割を果たしている。