松原慶太

8 1/2の松原慶太のレビュー・感想・評価

8 1/2(1963年製作の映画)
3.8
スランプに陥った映画監督が、本妻と愛人(たち)との関係に悩んだ末に、妄想の世界に入り込んでいく、という話。

ぼくはゴダールなんかよりも、喜劇的で祝祭的なフェリーニのほうが好みなのだけれど、基本的にイメージの作家なので、あまり緊密なストーリー性は期待できない。退屈な部分と、目眩くイメージの奔流の部分との落差が激しい。

マストロヤンニ演じる映画監督は、SF映画を撮っているという設定で、巨大な宇宙船セットの場面はワクワク感がある。

全体にやや散漫な印象があり「アマルコルド」や「女の都」のほうが個人的には好きだが、フェリーニが映画について、その創作の苦しみと、高揚感を描いているという意味では、唯一無二の作品かもしれない。

主人公は自殺したのかな、しなかったのかな。例によって、祝祭的なエンディングで幕を閉じる。

奥さん役のアヌーク・エーメが美しい。また映画の冒頭に幻想のように現れ、終盤にふたたび登場するクラウディア・カルディナーレが、創作のミューズ的な役割を果たしている。
松原慶太

松原慶太