YasujiOshiba

ひかりのまちのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

ひかりのまち(1999年製作の映画)
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レンタルDVDのお相伴。ウィンターボトムは気になってる監督。収穫あり。すぐに思い出したのはカサヴェテスの『アメリカの影』(1959 )。あちらが五十年代の最後の年のニューヨークのスケッチだとすれば、こちらは九十年代最後の年のロンドンのスケッチ。主人公は三人姉妹とその家族。時は11月5日の「ガイ・フォークス・ナイト」の前後の5日間。

このガイ・フォークス・ナイトというのは、1605年に発覚した政府転覆未遂事件「火薬陰謀事件」に由来、その実行責任者として逮捕されたガイ・フォークスを表す人形(ガイ)を曳き回したのちに篝火で焼く行事のことで、現在では打ち上げ花火を楽しむ祭り。この歴史的な事件のついては、『Vフォーベンデッタ』や『シャーロック』にも登場するけれど、イギリス史にとっては重要な事件。

原題は「ワンダーランド」だけど、これはもちろん「アリス・イン・ワンダーランド」に由来。もうひとつは階級問題。実にイギリス的なワーキングクラスのアクセントがこの映画の魅力。それから街をゆく車。80年代のBMWとヴェスパ。

無関係の出来事が少しずつ編み上がってゆくのようなストーリーラインがよい。そしてそのバラバラに始まるストーリーラインが、点と点を結んでゆくように、空間をもマッピングしてゆく。そんな空間と時間の絡み合いがとてもここちよい作品。

そんな作品だからこそ、静止画をつないで低速度撮影のような効果を狙うタイムラプスの手法が生きるわけだ。ウォン・カーウァイの『恋する惑星』に触発されたものだそうだが、そっちもみなくちゃね。
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