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幕間のakrutmのレビュー・感想・評価

幕間(1924年製作の映画)
4.2
フランシス・ピカビアが脚本、エリック・サティが音楽を担当した二幕バレエ『本日休演』の幕間に上映することを目的に撮影された、ルネ・クレール監督の短編映画。映画のストーリー性を否定するアヴァンギャルド映画の代表作として有名であり、ルネ・クレールが最初に撮影した作品でもある。(なお余談だが、パリのシャンゼリゼ劇場での『本日休演』の初演は1924年11月29日が予定されていたが、題名どおりに休演してしまい、実際に初演が行われたのは同年の12月4日だそうである。なので、本作『幕間』の初上演日もこの日となる。)

そもそもバレエの幕間に上映するのだから、ストーリー性のないほうが都合が良いであろう。ストーリーではなく映像そのもので魅せるために、スローモーション、ローアングル、映像の重ね合わせ、移動撮影などなど、様々な映像技法が使われている。もちろんこれらの技法そのものはすでにジョルジュ・メリエスたちが開発している(ルネ・クレール自身もメリエスのファンであったそうである)が、それらを組み合わせて生き生きとした映像に仕上げる手腕は見事である。時々、『アンダルシアの犬』と並ぶシュルレアリスム映画と説明されることがあるが、映像を見ればわかるように、本作はシュルレアリスム映画ではない。

見どころの多いシーンの中でも、個人的に気に入ったのは以下のシーン。
・ダンサーを透明アクリル板の上で踊らせて、下からスカートの中を撮ったような映像。ダンサーにしては脚がやけに太いなあと思っていたら...びっくり!
・暴走している霊柩車を参列者が追っていくシーンで、疾走感を出すためにジェットコースターから撮影した映像が挿入される部分。今見ても疾走感満点。

本作のもう一つの見どころは、当時の著名な芸術家たちが出演している点であろう。『泉』のマルセル・デュシャンと写真家マン・レイがチェスをしているシーンが有名である。(マルセル・デュシャンは実際にチェスの名手であったそうである。)また、大砲に弾を詰める冒頭のシーンでは、作曲家エリック・サティと画家・詩人のフランシス・ピカビアが出演している。個人的には、アンディ・ガルシア似のピカビアを見れたのは嬉しかった。
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