ほーりー

群衆のほーりーのレビュー・感想・評価

群衆(1941年製作の映画)
4.6
フランク・キャプラは凄い。

本作を観て改めてそう思い知らされた。本作は現代でもそのまま通じる内容である。

キャプラの演出のキレも『或る夜の出来事』や『オペラハット』の頃と比べると格段にレベルアップしているように思う。

あらすじはこう。

新聞社のオーナーが代わり、大量の従業員が解雇されることになった(このリストラの描写が小気味良い)。

解雇宣告された記者(演:バーバラ・スタンウィック)は腹いせに「ジョン・ドー」と名乗る人物からクリスマスイブに市庁舎から投身自殺する旨の投書が来たという偽記事を飛ばす。

嘘の記事にも関わらず大きな反響があったため、新聞社はスタンウィックの解雇を取り消し、彼女は続きの記事を書き続けることになった。

しかし肝心のジョン・ドーがいなければ書きようがない。

そこで新聞社に自分がジョン・ドーだと名乗り出た男たちの中から誰かを「ジョン・ドー」に仕立てようと考える。

厳正な審査(真面目で口の固い《典型的》なアメリカ人という条件)の結果、元野球選手の真面目そうな浮浪者(演:ゲイリー・クーパー)が選ばれたのであるが……。


クーパーの浮浪者仲間を演じるウォルター・ブレナンは、『西部の男』『ヨーク軍曹』『打撃王』と立て続けに共演していて、クーパーとの息もぴったりでまさに女房役といった感じ。

クーパーが吹くハーモニカに対してオカリナでセッションするシーンや、お目付け役と一緒にエア野球するシーンが何とも堪らない。

そしてスタンウィック。いいですねぇ、スタンウィックの姉御肌なキャラクターがピタッとハマっている。

あとエドワード・アーノルドとジェームズ・グリースン。この二人が最後全部かっさらってしまう。

フランク・キャプラの演出に関しては、何といっても屋外シーンの描写が凄い。

雨が降る中での全国集会シーンでは、クーパーが権力を前に無惨にも挫折する場面であり、打ちつける雨が彼の悲しみを更に盛り上げている。

そして忘れちゃいけない。雪がしんしんと降る市庁舎でのラストシーン。

『素晴らしき哉、人生!』を観た後で本作を観ると、「なるほど!ここに通じているのか!!」と思わず膝を叩いてしまう。それにしても何てこんなに美しく雪を撮る監督なのだろうか。

こりゃ本物だぜ。

■映画 DATA==========================
監督:フランク・キャプラ
脚本:ロバート・リスキン
製作:フランク・キャプラ
音楽:ディミトリ・ティオムキン
撮影:ジョージ・バーンズ
公開:1941年5月3日(米)/1951年6月15日(日)
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