Tラモーン

仁義なき戦い 広島死闘篇のTラモーンのレビュー・感想・評価

仁義なき戦い 広島死闘篇(1973年製作の映画)
3.8
『狐狼の血』が好きな会社の後輩に「『仁義なき戦い』めちゃくちゃ面白いぞ!」と熱っぽく語ったところ、「Tさんもだいぶ行くところまで行ってしまいましたね😅」と言われてしまいましたが、今宵は広島死闘編です。


昭和25年、広島市。賭博の最中の喧嘩により傷害罪で服役した山中(北大路欣也)は出所後、村岡組組長の姪・靖子(梶芽衣子)の食堂に立ち寄る。そこでトラブルを起こし大友勝利(千葉真一)の一派に袋叩きにされてしまうが、その縁で大友組組長が村岡組組長へ詫びを入れることとなり、山中は村岡組へ迎え入れられる。元々は友好関係にあった村岡組と大友組であったが、時代の変化とともに利権を巡って争うこととなり、その抗争に山中は巻き込まれていく。


相変わらず凄い熱量とバイタリティと役者の顔面の濃さ。
前作では仁義に重きを置く広能(菅原文太)が主人公だったが、今作では彼は事態を客観視する脇役へ退き、時代に飲み込まれ抗争の渦へと巻き込まれて行く山中の鉄砲玉としての悲哀にフォーカスされたつくりになっている。

"ええ男になれよ"

そう言われ極道の世界へ足を踏み入れた身寄りもなく、右も左も分からない若造にピストルを握らせ、汚い仕事を押し付け、私腹を肥やすヤクザの幹部たち。
裏切り、騙し合うヤクザ同士の利権を巡った争いにいいように使われる山中の真っ直ぐさが切ない。
彼は自分を信じてくれた親父のために、愛する靖子のために一生懸命生きただけの男だったのだろう。

北大路欣也のギラついた目と、脂っこい顔面のインパクトが強すぎる。
強さに憧れ、ヤクザとして認められたかった山中が初仕事の後、役目を果たしたばかりのピストルを見つめながら口笛を吹き、笑顔を見せるシーンのなんとも言えない「向こうに行ってしまった感」が印象的。

そして対照的な如何にも乱暴者で傍若無人な暴れん坊の若旦那・勝利を演じた千葉真一のインパクトもかなりのもの。
組の伝統よりも新時代のヤクザを築くべく野心を燃やす表情は、どこか落ち着いた山中と対照的。ワーワー言うとるのがやや小物っぽいのは残念だが、残忍さは人一倍のヤベェ奴。

基本的には山中vs勝利の構図が続く。

そんな中でもやはりヤクザの親分たちの私利私欲による若者たちの搾取はやはり憎たらしい。

亡くなった若者を「任侠の鏡」と称して褒め笑う山守組長と、満足気な村岡組長。
それを尻目に苦々しい表情を浮かべる広能。

"今その墓を訪れるものはない"

刹那を生きた若者が使い捨てられるヤクザの世界。山中の駆け抜けた人生はなんだったのかと虚無と哀愁に襲われるラストシーン。


ヒロインを演じた梶芽衣子さん、2024年現在でもバリバリに通用する美人さんで素敵だった。強い女性としてのキャラも立っててよかったな。

1作目にはやや劣るものの、このシリーズまだまだ観続けたいと思わせてくれるエネルギーが凄い。
Tラモーン

Tラモーン